あるスーパーにて 赤青合戦

2月も半ばになればと、近くのローカルチェーンのスーパーへ行く。
いちごと山菜の前を抜けて、鮮魚売場へ向かった。
「おお、やっぱりあるじゃないか!」と手に取った。
ところが、シールを見れば、これは「赤貝刺身」。

何てこった。

しかし、どう見ても私が欲しかった「青柳の舌切」にしか見えない。
ちょっと待て、冷静になれ!
これは赤貝の新種か?初耳だ!
自分に内緒でそんなものができていたのか?
それとも、愛知にはこんな赤貝がいるのか?

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周りを見渡してみる。

どの刺身の盛合せにも赤貝は見当たらないぞ。

う~ん。
頭の中では赤と青がくるぐる回って戦っている。
さらに見回してみる。
単品で「ホタテのヒモ」はパックに入っているが、「赤貝のヒモ」はどうやらなさそうだ。さあ、もっと冷静になれ!
もう一度よく見る。
が、やはり「青柳の舌切」にしか見えない。
従業員さんはいるか?
いないなあ…

きいてみることも出来んか…

意を決して信じることにした。
春なのだ。
自分は青柳を求めてここに来たのだ。
赤貝の旬にはまだまだ早すぎるではないか。
レジには高校生くらいの女子がいた。
きいてはみたが、もちろん彼女は正解など持ち合わせていない。
「魚担当にきいてみないと…」

素直な私は、答えを求めるべくもなく、「赤貝刺身」を袋に入れて、特別な思いで店を出た。

ここからが妄想だ。

慣れない鮮魚担当者の若者がいた。
値段シールを付ける際に先輩にきいたのだ。
「これは何ですか?」
「それか?それはバカガイだ。」
「分かりました、アカガイですね。」
「うん、そうだ、間違えるなよ!」
「ハイ、任せてください。」
きっと、こうだったのだ。

これに違いない。

結論を言おう。
味わってみれば、色も形も香りも味も、青柳(バカガイ)にそっくり。
二度と味わうことのできぬ、新種の「赤貝刺身」だった。
世間とは広いものだ。
固定観念は怪我の元!
なのだ。