2017 秋田の酒きき酒会 その1

美酒王国菰樽

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美酒王国秋田

昨年に続き、今年も「秋田の酒 きき酒会」に参加してきました。
  • 主催: 秋田県酒造協同組合
  • 会場: TKPガーデンシティ品川 シナガワグース1F
夜の部は「秋田の酒を楽しむ会」で、一般消費者対象の会です。ずいぶん前からチケットは売り切れになっていました。

私が行ったのは昼の部の「きき酒会」。酒販店、飲食店、業界関係者対象の会です。美酒王国秋田の27蔵が出展しています。

会場に入ると右からぐるっと左回りで、壁際に各蔵元が並んでいます。夜の部の定員500人の会場と一緒ですから、ホテルの立派な宴会場には、すでに丸テーブルが54卓並んでいますので、圧巻の広さです。

最初のコーナーには、秋田の名産や蔵元名の入った前掛けなどをお土産で買うことができます。いぶりがっこ、とんぶりの瓶詰めにきりたんぽ。お酒に辿り着く前から舌なめずりです。
見回すと、今年の方が参加者が多いように感じます。
中央ステージの袖に「美酒王国秋田」の菰樽を飾っていて、これがいい味を出しています。
さあ、蔵元訪問と行きましょう。

有名銘柄がいっぱい

それぞれのブースに各代表銘柄ののぼり旗を掲げています。
それを見ただけでも、なんと有名銘柄が多いことか!もしかすると新潟に次いで、人に知られたお酒が並ぶ県かも知れません。

 新政

すごい人だかりです。このところ進取の気概で新しく挑戦しているお酒が多く、注目を集めるのも当然でしょう。「ラピス」なども人気銘柄になっていますね。割り込むことは一旦控えましょう。

 出羽鶴

・ 飛天の夢 にごり生酒純米吟醸
季節物でしょう、飛天の夢のにごりは初めてでした。気持ちのよい酸とフレッシュさが魅力的です。
・ 出羽鶴 純米生もと
お燗にオススメ!とあるようにふくよかさがいい。しかも720mlで1,000円。

こうしたお酒を大事にしたいです。

 刈穂

ご存じの方もいるでしょうが、出羽鶴と刈穂は同じ会社です。しかし「やまとしずく」も含め、別ブランドとして競うように磨き上げています。それぞれが皆、みごとに地位を築いているのは流石です。

・ 刈穂六舟 無濾過中取り純米吟醸

六舟の季節限定酒。通常の六舟とは違います。「みずみずしい香味と、さわやかさを感じる旨味が特徴」と冊子にあるように無濾過中取りならではの楽しみがあります。

いつでも寄り添うような酒

秋田の酒も昔ながらだけでなく、チャレンジをしながら新しい需要を模索している酒蔵はあります。これまで「秋田の酒はやさしい」と思っていた私にも、この概念の是非は常に問われています。

秋田酒造協同組合主催の今回の「きき酒会」は、そんな私に改めて語りかけていくるようなイベントです。

ゆきの美人純米酒 完全発酵
  •  精米歩合: 60%
  •  日本酒度: +13
  •  酸  度: 1.5
  •  価  格: 2,400円/1.8L
  •  冊子コメント:「「米の旨みを残しながら、後味はさっぱりした辛口純米酒」

ゆきの美人

完全発酵という名目の造りを最近よく見るようになりました。

糖化の極みまで段階を踏んで、これ以上にアルコール発酵しないというレベルまで造り上げたお酒。もちろん甘くはないはず。

ここに残る甘味があるとすれば、米の持つ本来の甘味(旨み)であるはずです。
際立った辛さは感じないまま、旨みを残している。
まさに米の旨さを究極に表現しているということなのでしょうか。

「ゆきの美人」という名前からは想像し難いタイプ。それはそれで、別の美人と出会った感じなのかと、勝手に発想してみました。

どんな時も常に、そばに寄りそてくれているようなやさしさ。
秋田の酒のやさしさはそんなところにありそうです。

日常酒を再考する

大手メーカーの最近の日本酒では紙パックの2Lで発売されているものが数多くあります。
確かに、40年前の1.8L瓶で1,000円ほどで売られていたものと比較すると、雲泥の差で今の紙パックの方がよくできています。

当時の1,000円酒を日常酒にするのは、貧乏学生でも敬遠した時代です。

だいたい、飲食店で扱う場合、見せて売ることが難しいのが紙パック、ボトルを見せて売ろうとするのが1.8L瓶です。

そこで出品されていた酒に注目したいと思います。

銀鱗 淡麗辛口(普通酒)
「レギュラータイプのお酒です。冷やでも燗でもオススメです。」
冊子のこの文句からも、日常で愛用するのに最適のようです。
  •  精米歩合: 67%
  •  日本酒度: +3
  •  酸  度: 1.7
  •   アルコール : 15度
  •  価  格: 1,602円/1.8L
銀鱗淡麗辛口
温めて飲むと本質が生きてくるようです。飲食店需要が多いのは、コストパフォーマンスが高いということです。

やや高めに設定している酸度から、燗酒でのシーンを見越しているのでしょうが、確かにこのお酒、1,602円という価格からすると、別格で魅力的な味です。

「普通酒なんですよね。」と蔵人さんから言われた時に、私の返した言葉は

「旨けりゃ良いでしょ。」でした。

三増酒でないことはわかっていますから。
反対意見が当然のごとくあるのもわかります。もちろん私のほうが正しいと主張する気もありません。
でも、1.8Lで2,800円のお酒では、家庭での食卓の晩酌にはのぼりませんよ。
特別な酒である以上、日常酒にはならず、日本酒の一般化には繋がりません。
この辺のせめぎ合いは、私には楽しくて仕方ありません。