「越の三梅」、今ではその言い方も幻?

 越の三梅

梅の便りがピークになっています。

私が地酒に巡りあった頃、新潟の三銘柄が「越の三梅」と言われていました。

「峰乃白梅」
「越乃寒梅」
「雪中梅」

この三銘柄です。
当時、「峰乃白梅」は比較的手に入りやすかったのですが、他の2銘柄はなかなかどうして、飲んでみるにも苦労とプレミア付きの料金が付いて来ました。ずいぶんの年月が経ち、それぞれに紆余曲折もあったでしょう。裏話や噂話や、もろもろ聞きましたが、今ではかえって、「峰乃白梅」を一番見かけなくなりました。

その頃のある日、近所の酒屋さんで「越乃寒梅 一級純米酒」を見つけました。
※今では級別の表示はなくなりましたので、ピンと来ない方もいるでしょうが、その話は別途にお知らせします。

しかも普通に値札を付けて他のお酒と一緒に並べられています。
その時その店では2100円ほどだったと記憶しています。
もっとも1本しかありません。
何しろ通常価格では手に入りにくいものだったので、思わず
「これ、売ってもらえるんですか?」と聞きました。

越乃寒梅白ラベルもちろんその酒屋さんではその値段で気軽に売ってくれ、喜々として持ち帰りました。実際に味わってみると、さすがでしたね。
当時、2,100円で手に入るお酒でこれほどに楽しめるものは少ないでしょう。
まさに新潟を代表する銘酒だということは十分に納得できる、価値ある1本でした。

同じ頃に友人が新潟の地元から送ってくれた「雪中梅」。
正確には記憶してないのですが、吟醸酒だったと思います。(写真は当時とは別物)
これも見事なお酒でした。
やさしく、やわらかで奥の深い、やや甘く感じる味わいでした。
「越の三梅」という名前を産んでいるだけのことはあると、感心して飲ませてもらいました。

その後はさらに「越乃寒梅」も「雪中梅」も幻の酒と呼ばれ、存在すら忘れられるのではないかと思えるほどの、希少価値のあるお酒になって行き、めったに見かけることがなくなったのも事実です。30年以上の時が過ぎ、今ではやっと、どちらの銘柄もたまに酒屋さんの店頭で巡り会うようになりましたが、その当時と今では蔵元の醸造環境もずいぶんと変わっていることでしょう。

なんと最近の若い(と言っても30代)地酒ファンのお客様には、そのどちらも耳にしたことがないという方も珍しくありません。ほんとうに「幻」になってしまっていたのですね。

「越の三梅」とは、今ではまるで伝説のように語られる名称になってしまいましたが、地酒が世間にアピールして評判が良くなれば、あっという間に手に入らない酒のリストに載ります。存在を知ってもらうのは大切なことです。
当時は地酒を専門に扱う酒屋さんも少なく、地酒を中心にした飲食店も少なかった時代です。そういう頃に一時代を築いた銘柄が引っ張っていた、最初の頃の地酒ブームでもありました。

 越の三梅の現在

失礼ながら、「越乃寒梅」は、一時、世間から姿を消すほどに見なくなりました。そして、偶に飲む機会があっても納得がなくなったこともあります。

「雪中梅」はランクは色々あれど、現在デパートの棚などで見かけることがあります。珍しく自分で買い求めたことも、もちろんあります。私の感覚からすれば、「雪中梅」が何処かの棚にあることさえが奇跡だった思いがあるだけに、試してみられたのは幸いです。

むしろ「峰乃白梅」
見かけなくなりました。新潟酒の当時の典型から外れて、淡麗辛口では括りにくい酒造りをしていたはずです。今は私もこの「峰乃白梅」を飲んでない期間が長く、評価することができないだけに、培ってきた日本酒造りの技を生かしていてくれればと期待を込めて見守るしかありません。

時代とともに「越の三梅」の銘柄が変わったとしたら、それはやむを得ないことだと思います。たとえそうでも、「三梅」という名前を残し、それを見守ってきた歴史はあなどれないはずです。

こんなふうに人の心に残る酒造りをしてきていることの方が、称えられて然るべきでしょう。今もなお「越の三梅」という名が残るとするならば、残された名に相応しく、酒蔵の努力が問われることになります。

現在になって、代表銘柄を口にしやすくなったのならば、それを契機に、益々の精進と挑戦をして欲しいと思うのは、酷と言うものでしょうか?しかしそんなことを物ともせず、自分の酒造りを邁進してくれれば、お酒の未来も拓けてくることでしょう。

良いか悪いかはともかく、どの時代も私はこんなブランド作りは戦略のひとつだと思っています。今では「越の三鶴」と呼ばれるブランドも有り、その名に恥じぬようブランド価値を高めることにお互いが力を尽くしてくれるなら、案外に安い販売促進になりそうです。新しく並び立つブランドも含めて、品質の向上になる競争は歓迎したいと思います。