若水(わかみず) 富士山の麓の旨酒

 駿河小山の酒屋

御殿場近くのひなびた駅。
その町の昔ながらの酒屋さん。
夕暮れにはまだ早い時間、人通りも車の姿も殆どありませんが、その道は町の中心としての街道に違いないはずです。商店街と言うには余りにも侘びしくシャッターの並んだ町に、ひっそりとそのお店はありました。
通りがかりの知らない酒屋さんにふらりと立ち寄るのは、私の趣味というよりは楽しみのひとつ。
その思いもあって、たまたま降り立った駅で町を歩いてみました。そして見つけたのがその酒屋さんです。
どこの酒屋さんもそうですが、それぞれに特徴があります。
  • 昔ながらに、照明を少なめにして光線を避け、品質管理にも生かしていて、酒類の他は品揃えを絞っているお店。
  • コンビニ同様に酒以外をあれこれとしっかり揃えているお店。
  • ご主人の好みからか、ワインの品数が圧倒していて、輸入物のチーズや珍味にまでこだわっているお店。
  • 店の外にまで日本酒の銘柄を掲げ、軒先には杉玉までも下げ、店内にはこだわりの地酒をずらりと並べたお店。
  • 努力は見て取れるけれど、方針がぼやけていて、品揃えもどこか行き当たりばったりに見えてしまうお店。
  • 残念ながら、商売としてほぼ諦めてしまったのかなと思わせるお店。
  • 角打ちまでやっているお店はほとんどありません。

 酒屋は何を売ればいいの?

酒屋さんはみんな長く商売をしてきた歴史があります。
お店の立地や規模や資金力などで、やり方は千差万別です。
正解を見つけることも並大抵のことではないはずです。
中でも、酒屋さんの大きな問題は「跡取り」だとききます。いや既に、その次の段階に進んでしまったところも多いことでしょう。

酒屋さんに限らず、町に根付いて商売をしてきた店舗の方は、この跡取り問題がかなり前からの課題です。そこで自分で商売をすることをやめて、他人にテナントとして貸している人が商店街に多くなると、その商店街は結局のところ力を失っていくのが早いように思います。

今では先ずあり得ないことですが、酒屋さんは「御用聞き」という役割も果たしていました。「サザエさん」に三河屋さんという酒屋さんが出入りしていたのを思い出します。お酒やビールだけでなく、醤油や味噌などの調味料も一緒に配達してくれたものです。もしかしたら、キャベツも斜向かいの八百屋さんから預かって一緒に届けてくれたかもしれません。今で言うデリバリーは酒屋さんやお米屋さんの持ち場でした。

 若水特別純米酒

今回の御殿場近くの酒屋さんは、まさにその昔の佇まいで、時の流れを感じさせてくれる雰囲気のお店でした。町がきっと寂れてきて、若い人や住んでいる人自体も少なくなったのでしょうね。品揃えはやはり豊富というわけではなく、最小限のものに限られているようでした。

しかし、その中で目を引いたのが「若水特別純米酒」です。
瓶を手に取り、ラベルを確認しながら、期待に胸を… 買い求めて帰ってきました。

御殿場小山町の酒造好適米「若水」を55%に精米。
かすかにチョコレートのような、熟したブドウのような香りをほのかに湛え、意外なほどの辛口酒。米の旨さもしっかりと残り、ふくらみもあります。
その土地その土地に生まれた食材。

そのお米と水を生かしておいしいお酒を造り出してくれる人がいます。
それを大事にしてもらえる環境を私たちは守り続けられるでしょうか?
それが私たちの宝物だと信じることを、忘れないでいられるしょうか?