番番 新宿歌舞伎町という街に生きる

 やきとり番番

「やきとり」と言えば、私にとってはずっと以前から、この「番番」という店の受け持ちでした。
L字から先がさらにU字へと繋がる、長い長いカウンターのみのやきとり屋です。昔ながらのやきとりの王道を行く店です。
新宿の歌舞伎町に今でもある店ですが、オーナーは何年か前に変わりました。しかし、メニューはほとんど変わっていませんでした。
もちろん高級店ではありません。まさに大衆の味方です。

※ オーナーが変わったのではないようです。
しばらく人に任せていたそうで、後日にオーナーと会って確認しました。

番番01  番番02

私にしてみれば、お店の歴史の内の40年ほどを共有させてもらってきたと言えます。店の歴史が長いと、お客様の歴史も長く、かつて私の仕事先に転職してきた元証券マンだった人が、この「番番」の常連だったこともあります。
また、仕事先の業者さんからきかれた時、「普段行くやきとり屋」として、一緒に訪ねたりしました。その業者さんは、日を改めてお友だちとも何度か行ってくれたそうです。

若い頃に早い時間でしたが、10人ほどで訪ねたこともあります。
カウンターしかない店に10人とは、ずいぶん無謀なことをしたものです。
案の定、U字型のカウンターを占領することになり、挙句には若さも手伝って、迷惑なことにカウンター越しの議論の場になってしまいました。
10人もいれば、多少の分別が残っている者がいて、それ以上の迷惑をかける前に短時間で退散することができましたが、ヒヤヒヤものです。

私たちの仲間内では、この店には迷惑をかけることなど絶対にあってはならぬ存在でした。飲ませてもらっている、入れてもらっているという具合です。
もしも仲間の誰かがフトドキにもそんな真似をしようものなら、他の仲間からコテンパンにやっつけられます。

 新宿 歌舞伎町

あの歌舞伎町で40年以上も商売を続けるなんて、ある意味奇跡です。
そんな時代をくぐり抜けてきた店には、きっと相当の努力があります。
アルバイトの時間給が500円だった時代に、1本70均一円だったやきとりが、たぶん今は100円均一です。品質は落としていません。

未だに歌舞伎町は訳の分からない店も多いみたいで、ニュースにも取り上げられています。確かに魔界のような街のイメージは拭えないかも知れません。でもこれこそが歌舞伎町の魅力なのです。よく言われるように「日本の縮図」「人生の縮図」にあたるとしてみると、本当に面白い街です。何もかもが極端に表現されていると思えば、納得もします。

決してスマートに遊ぶ街ではないでしょう。
どう考えても銀座と勝負しようなどとは、微塵も考えない街です。
殊更に見栄を張ると、かえってみっともなく見られるような大衆の街。
だからこそ、痛い目を見ようが、通う人が絶えないのでしょう。
という私は、お陰さまでそれほどに痛い目はまだ見ていません。
新宿ゴールデン街
「番番」は先日に火事のあった新宿ゴールデン街のほど近い場所にあります。
いつだったか、福島で教員をしている学生時代の友人と、しばらくぶりに会って寄った日です。もちろんその友人も学生時代は、一緒に足繁く通った仲です。
閉店後に「番番」のオーナーに誘われて、ゴールデン街のオーナー行きつけの店まで三人で行ったことが、いい思い出として浮かんできます。
新宿、歌舞伎町の夜は、こうして更けていきます…