恵比寿横丁から学ぶ我が独りよがり

この記事の目次

 人を引き寄せる

お洒落な街恵比寿に、いかにも雑然と作った「恵比寿横丁」があります。

ビルの1階を小分けにして、いろいろな業態の飲食店20店舗ほどが、ぎゅうぎゅう詰めで営業しています。店舗の間仕切りのようなものは簡素で、フロアの真ん中を狭い通路が通り、中央部には共用の広めのトイレがあります。

たくさんある恵比寿の飲食店のうちでも、この恵比寿横丁のピーク時には常に人であふれています。しかしどの店も、失礼ながら座り心地の良さを求める人には向きません。隣の人とは肩がぶつかるのも当たり前の状態です。

どの街に行っても思うことがあります。

お洒落に、キレイに、洗練されたデザインで、いかにも女性ウケしそうな飲食店が最近は多くなっています。いわゆるカフェという言い方のほうが今ではいいのでしょうか。ところが、そこに人があふれる姿は、先ず見ません。もちろん例外はあるでしょうけど。

それに引き換え、やきとりの煙が店内に漂っていそうな(実際は漂っていません)店や、いかにも安く飲ませてくれそうな店、長テーブルで相席も当然の店など、店内の様子が分りやすい店は、けっこうお客様が入っています。

 高いか安いかの境目は

おしゃれなカフェの実状は私には想像するしかありませんが、他の大衆っぽい店と比較して、客単価が大きく違うとも思えないのです。

チェーンで展開している低価格業態は別にして、古めかしい構えの居酒屋は決して安居酒屋ではありません。なのに、お客様はそこに何かを求めて集まっています。

以前にも紹介した、新宿の「番番」も恵比寿の「たつや」も、少し飲み食いすれば一人3,000円にはなります。この金額だと安居酒屋ではありません。しかも、好みの席を選べる余裕などもありません。むしろ、お客様の「カウンターは嫌だ、座敷はないのか」という要望を受け入れる余裕のある居酒屋チェーンの店であれば、だいたい同じような単価か、もっと安く上がるし、座り心地もずっと良いかもしれません。

その違いを、高いとか安いの違いで選択しているのでしょうか。
もしそうであるなら、その境目はどこにあるのでしょうか。

細かい理由や価値観を挙げれば、とんでもない数の議論ができると思います。しかし、そんな議論を排して単純な結果で言えば、高いか安いかの満足度はリピートで量るしかないのです。しかも、それを決めるのは100%お客様です。
私はそう信じています。

 独りよがり

店というのはどうしても店側の頭で物ごとを考えてしまい、お客様の心理を十分に理解して判断していることは少ないのではないかと思います。今更ですが、ここに店を営む側の大きな勘違いが生まれているように思えてなりません。

これは得てして「独りよがり」という形で現れます。

おすすめメニューや季節のイベント等、どこも様々な工夫をしてお客様に提案しています。ところが、これが「独りよがり」に終わることが多いように感じます。独りよがりにならないためには、自分の立場で考えるのではなく、お客様の立場で考えることが必要で、自分の都合を先に考えるとしたら最悪です。

お客様の立場で考えるには、その心理を知らなければなりません。そしてそれは、お客様との日々の会話から探っていくしかないのです。
自分の店に何を求めて、何を期待して来てくれているのか。
繁盛店はきっとその点で優れているのでしょう。
何を食べたいのか、何を飲みたいのか、いくらなら納得してくれるのか。

しかも、それ以外に何を大切にすればいいのか。

恵比寿横丁の姿を見て、改めてその思いを確かにしました。

そして、老舗の居酒屋の実力の在り処も。

リンク: 番番 新宿歌舞伎町という街に生きる
たつや 恵比寿の老舗やきとり店の力