進入禁止の販売促進

安くするしかない?

かつてバブルの後にマーケットが縮小したにもかかわらず、居酒屋だけは新規出店が相次いだことがありました。居酒屋の粗利益率が70%前後だということに目をつけて、他の産業を中心にしていた企業からの流入がそれでした。

おいしいと思って手を出してきたのです。成功も失敗もそれぞれにあったでしょうが、それに倣うよに業種を変えて物販店が飲食店に変わってしまった商店街さえあります。

そうなると既存の居酒屋も生き残りをかけて、様々な対策や販売促進に精を出すことになります。そんな時に私が見た破滅への販売促進をご紹介します。

そこは中堅の居酒屋チェーンの店で、土日の集客がやや厳しい町の駅ビルの6階にありました。一度だけ行ったことがありましたが、おそらく60坪ほどの店だったと思います。残念ながら繁盛している気配はなく、辛いだろうなあと対岸の火事の如くに見ていたものです。

ある時、その居酒屋のビルの入口にこんな看板が出ていました。
土日限定、料理全品半額!

これを見た私の感想は、「やっちゃったなあ!」でした。
入ってはいけないところに入ってしまった。
当時、私が担当していた店の営業会議などで、話題にしたことがあります。
きっとその内に「土日を外して毎日になるよ」というのが私の読みでした。しかし、その店は必死の思いで取り組んでいたのだと思います。

やがて、そんなに間をおかず、その店は私の予測通りになりました。
毎日・料理全品半額!」と看板が変わっていました。

「ああ、やっぱりな。残念だけと潰れるね」とまた会議で話しました。もちろん会議の中では、その理由も話していたのですが、余りに予測通りになるのも怖いものです。そして、私はそこまでで終わると考えていたのです。ところが、しばらくしてさらにエスカレートしてしまいました。

毎日、全品半額!

「うわあ、ここまでやっちゃったね」というのが正直な感想でした。そして間もなくご臨終の時を迎えることになりました。

販売促進

販促については、決まりきったことがたくさんあります。。しかし、その決まりきったことは既に何の効果も生みません。しかもその殆どは「安売り」です。この「安売り」の概念から離れない限り、救われることはありません。

先ほどの店は何のために、精査して考え抜いたメニューがあったのでしょう。そのメニューを使って、正規に商売することで利益が出るよに計画されていたはずです。なのに、次々に半額にしてしまうのです。そもそも半額で成り立つメニューや業態ではなかったはずです。遂に、その境界線を壊してしまったのですから、これを自殺行為と言います。

お客様心理を考えればもっとわかりやすい話になります。たとえ土日であれ、半額に慣れてしまったお客様にしてみれば、もうそれが当たり前です。土日が半額ならば、平日は高くて損なので、行くべき店ではなくなるのです。半額が当たり前と刷り込んでしまうような販促になってしまったのです。

飲食店にとって、メニューとは経営戦略です。おいそれとは曲げられないものなのです。そのメニューを、決めた金額で何品売るかで経営が成り立つように出来ているのです。客数が足りなければ、メニューはそのままで客数を増やす企画を立てて実行するのが戦術です。既存のメニューの売価に手を付けることは経営の基幹を揺るがすことなのです。

万が一、そこに手を付けるとすれば、特別な「感謝祭」とか「開店◯周年記念」とかの、よほどの理由をつけて、2~3日間で留めない限り、自分で自分の首を絞めることになります。

私は最近見かける「ハッピーアワー」のように、「19時までは◯◯」のような企画にも大反対です。店のグランドメニュー(基準メニュー)には手を付けてはいけません。
万が一企画するとするならば、「本日入荷のカンパチ刺、早い者勝ち、1人前200円」というようなものならば分かります。

くれぐれも、自分の店の価値を貶めるような販売促進は絶対にしないことです。駅前で「生ビール1杯サービス」などという券を配ることさえ反対です。常連のお客様に失礼極まりないと私は考えます。

どこかの店が安売り企画を始めた時は、「よほど苦しいんだね」と判断するのが同業者です。これはある意味「恥」であり、お客様を侮辱するものであり、死の淵へ向かう最初の一歩だと私は考えています。