居酒屋 案外知らない自分自身

居酒屋が見落としがちなこと

居酒屋の現場は、汗をかいて、一生懸命に仕事をする毎日です。暇な日もあるでしょう、走り回ってヒイヒイと喘ぐような日もあるでしょう。仕込みに精を出す調理場も、掃除や片づけに追われるホール担当も、開店準備にのんびりする時間はありません。

だからこそ、マニュアルでチェック項目をしっかりと作っても、自分の仕事する店のことを、実はわかっていない、知らないことが沢山あります。忘れてしまっていることも含めれば、指を折って数えると両手で足りなくなるかも知れません。むしろ、指を折って数えながら気付くことができれば、何の問題もないと言えます。

以前は居酒屋のチェック項目や点数をつけるのにQSCに基づいて行なうことが普通でした。途中からそれにVを加えて、QSC+Vという場合もありました。近頃はあまり耳にしない気もしますが。

・Q Quality   品質
・S Service   サービス
・C Cleanliness 清潔
・V Value    価値

こんなことは百も承知でしょうから、紹介だけにします。
あとは幾つか例をあげますので、ヒントになれば嬉しいです。

お客様目線で見る

難しことはありません。見落としていたことや忘れていたことに気付くには「お客様目線で見る」という、これだけです。居酒屋の仕事は、ほとんどの時間で立って歩いています。しかしお客様は、椅子に腰掛けているか座敷に座っているかです。従って、自分たちの普段の目線より、お客様は低い位置から店や私たちを見ているということです。

 自分も腰掛けて見る

1ヶ月に一度で構いません、閉店後に、10分時間をとってください。開店前よりも気持ちに余裕があるはずです。ただし、店内の照明は営業中と同じようにしておくことです。そして、カウンター席も含め、すべての席に自分が腰掛けて、周りをゆっくりと見渡して自分がどう感じるかです。

最初からチェック目的で見ない方が賢明です。堅苦しくせず、眺めるようで構いません。きっとその内に、何らかの違和感を覚えることがあるはずです。私はよくこんな風にしていました。

例えば、「あっそうだ、ここ汚れてたんだ」と思い出すことがありました。小さな汚れなのですが、忙しい時に発見し、直ぐに汚れを拭き取れずにいたところを、何週間も経ったそんな時に思い出します。毎日、見ていたはずなのに、気づかないでいたのです。

不思議なもので、「あとで…」とか思っていると、そのうち忘れ、いつの間にか風景として溶け込んでしまいます。そして誰の目にもその状態が日常になって、気にもならなくなるのです。これは、汚れだけでなくいろいろなことで起こります。ぜひ一度、自分で腰掛けて試してみてください。

 お客様にきいてみる

常連のお客様が多い店は、少々のことはお客様の方が見逃してくれることが増えます。大したことじゃないからと、気にしないでいてくれます。しかもその程度であれば、わざわざ知らせてくれることもなくなります。初めてのお客様なら軽いクレームになるようなことも、許してくれている場合があります。

これこそ店側の私たちが一番気づきにくいことです。特に売上にもブレがなく、安定しているように見える時に、こういった少し心配なことが陰で進行しているかも知れません。

以前に、ある店でアンケートを積極的にやってみました。店には常にアンケート用紙を置いています。しかし普段、常連さんはアンケート用紙など見向きもしません。そこで、店長と相談して、その常連さんをターゲットに1週間ほど期間を定めて徹底的にお願いしました。

カンケーと内容は珍しいものではありません。先ほどのQSCを10項目ほどに分けて、良い・普通・悪い などにチェックを入れてもらうだけです。名前や連絡先の記入はもちろん任意です。

結果、目を引いてわかったことが1つありました。

「料理のスピード・遅い」 でした。

普段から「遅い」というクレームはなく、「まだ?」という催促も滅多になかったのです。ところが蓋を開けてみると、この結果でした。いつも文句は言わないし我慢してくれているのですが、「正直に教えて!」とアンケートでお願いすれば、教えてくれました。面と向かって返事する必要がない分、気軽に感じていたままを教えてくれたのだと思います。

このお客様にきいてみるということも、忘れがちですね。

従業員目線で見る

これはお客様を見る目線ではありません。もしもこれを読んでくれているあなたが店長なら、従業員目線で店長を見てください。普段はこれも蔑ろにしがちです。ですから、店長自分自身のことで気づいてないことがたくさんあるはずです。もちろん、個人ミーティングなどでじっくり聞くことも大切ですが、もっと気軽に見てみましょう。

店長は、自分が思っているよりもはるかに細かく厳しく、従業員さんから見られています。要望や希望や苦情をちょくちょく言ってくる従業員さんは少ないはずです。おそらく、この点を店長に改めて欲しいという件よりも、私たちのことをもっと知ってほしい、気にして欲しいという思いの方が強いかも知れません。どんどん仕事を教えて欲しいというのもあります。

ただ、店長が一人ひとりに向き合う時間は、意識しない限りそんなに多くはないはずです。常にこまめに目を向けて、声を掛けてあげることで、従業員さんたちがどう見ているか
を感じることができるでしょう。

こうして、自分自身で知らないことが多いと、常に自覚することが必要です。みんな私がしくじってきて学んだことですので、皆さんがその轍を踏むことのないように、何かヒントになれば幸いです。