赤羽 埼玉との境で栄える町

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 赤羽1番街

随分としばらくぶりの東京都北区赤羽。
東京から東北、上越へ抜ける関所のような場所にある町です。
この町の向こうの荒川を越えれば埼玉県。ターミナル駅としてもJR赤羽駅は重要な位置づけです。
しかし、申し訳ないながら、私には飲み屋が連なる町というイメージのほうが強く、地元で暮らす方たちの利便性などは把握できていません。
人との約束の前、駅へ着いたのは余裕を持って15時過ぎでした。
北改札を出ると、せっかくだからと散歩を決め込みまだまだ明るい駅近くをふらふらと歩いてみることにしました。
目の前に「1番街」の看板が上がり、それらしい雰囲気漂う商店街の入口が見えています。もちろん怪しげではなく、酒好きの飲み気を誘うような気配満点。まだまだ明るいと言うのに不思議なものです。
この一角の中心らしい十字路にはすでに3人のキャッチのお兄さんお姉さんが出陣していて、こんな時間から戦いが始まっているとは思いませんでした。その横を抜け、市場を思わせるような細い路地に入ると、まもなくオープンという準備で忙しそうな店もあれば、もう当たり前のように開店している店もあって、ほとんどが飲食店。
全体としては狭い地域にぎっしりと詰め込まれたような飲食店街で、大手チェーン店の姿はほとんどありません。平日のこの時間というのに、これだけの居酒屋が営業を開始していいることがこの街の常識になっているようです。
さらに、15時を過ぎた頃というのに、すでにほとんど満席というお店も何店かあり、とんでもない場所に迷い込んだ感じです。ある意味恐るべきパワーを秘めた赤羽なのかも知れません。

 定番のお店

飲食店、居酒屋にはもちろんそれぞれに個性があります。個性がなければ生き残っていけません。ですが、この赤羽の1番街で見た風景の共通点があります。15時を過ぎた時間帯で溢れそうなほどにお客さんが入っているのは、みんな昔ながらの居酒屋。隣の人と肩が触れそうになるような造りで、「もつ煮込み」がなければ話にならないような店ばかりです。しかも創業◯◯年というのが似合いそうな暖簾や看板。確かに若そうな人は見かけません。その店舗に入ったわけではないので、詳細はわからず表から想像するに如かずではありますが、概ね間違っていない自信があります。
人が集う店、人を寄せる店の魅力はこんなところにヒントが必ずあるはずです。オシャレで工夫した間接照明で、BGMはしっとりとしたジャズが流れ、ワインのセレクトに楽しみがあり、真っ白なお皿の真ん中に彩りよく盛られたサラダがあり…
こういう特別なシーンに登場するお店でないことだけは確かです。
余裕と体力があれば、短時間でも梯子をしてみたい店ばかりです。

 刺し身居酒屋

約束の相手とは先に少し落ち着いて話したい要件があり、選んで入ったのはビルの4階にある刺し身居酒屋でした。ここも15時~の営業で、地酒も豊富に揃えてあり、申し分ない環境でした。
料理は「平目の刺身」と「ナマコ酢」。
酒は島根の「月山芳醇辛口純米」と石川の「天狗舞山廃純米」を燗してもらいました。
窓から見える景色はまだ明るく、先ほどまでの赤羽らしさはない店ですが、早い時間からゆっくりしたい場合にはピッタリの思えます。天狗舞が燗に向くのは周知のところ、実は月山が良かった。温めに付けてくれた燗がふくよかさを増し、時間を彩ってくれたのは感謝です。
町の雰囲気もさることながら、酒を楽しむことのできる環境も店の価値の大きな部分を占めます。ここも素敵な店でした。

この店を1時間ほどで切り上げると、せめて赤羽らしさを味わって帰ろうとして次に向かいました。

古そうな暖簾と、表のおすすめメニューを見て深く考えないままに扉を開けると、店はほぼ埋まっていて、私たち二人が滑り込んで満席でした。
ふと壁を見ると17:15。
「きっとこれは当たりだね。」
この時間にこれほどの人があふれる店が外れの訳がありません。
ここの肉豆腐、鍋でグツグツと出てきたのですが、うまかった…

赤羽にはまた来なければなりません。