みごとな金目鯛 河津のAoki

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 河津 AOKI

私たちは今夜と明朝の料理を自分たちで用意しなければなりません。調達から調理迄です。調味料も必要なものを忘れると大変です。しかも、多少の調味料はともかく、食材を残すと持ち帰るのも面倒ですから、適量を見極めるのも大事なことです。

調達場所は河津のAOKIというスーパーマーケット。昨年もここで手に入れただけに、ここに来ればいい金目鯛がいると決め込んでいました。

多くの候補から金目鯛だけは外せない。それ以外は店の棚を覗いて考えようという極めてアバウトなものです。大雑把に、刺し身は欲しい、鍋は作ろう、金目は煮付けにしようと、その程度の決め事ですから、メニューは簡單に変わります。

スーパーの売場全体を見渡しながら、さあ食材決めです。
ごぼう、玉ねぎ、レタス、大葉、かいわれ大根、葉玉葱、根生姜。
ピカピカの金目鯛、地元で上がったブリ、青柳の舌切、シッタカ。
胡瓜と大根のぬか漬け。
野菜で言えば、どうしてもセリが見つかりません。
新ワカメがなかったのも心残りです。

 メニュー会議

海産物の金目鯛は目論見通り申し分ないものがありました。しかも今年は5人ですから2本の購入です。
煮付けにはアラも入れて、ゴボウもどっさりと加えて作りましょう。
「シッタカ」という貝、案外これは世に知られてないのです。磯の岩場にいる巻き貝ですから砂を噛んでいることはまずなく、ササッと塩茹でにすれば酒の肴としては舌なめずりです。
さらに青柳の舌切があったので、お造りはここに金目鯛の焼き霜造りをメインにして並べましょう。
他には寒ブリとタマネギのナメロウ(叩きなます)。
道の駅で見つけたスティックセニョールはサラダ、花わさびはお浸しの予定を変更して、金目鯛の煮付けのあしらいに。
鍋は金目鯛と地元の天然ぶりをしゃぶしゃぶもどきにして、葉玉葱と豆腐を加え、出汁にはとろろ昆布をたっぷり入れます。ポン酢であっさり系にしましょう。卓上コンロの用意がなかったので、普通にしゃぶしゃぶと言う訳には行きませんでした。
胡瓜と大根のぬか漬けがいいアクセントになりそうです。
こんな風に、普段の東京からは比べ物にならないくらいの食材を用意することができました。
あとは腕次第というところ。
ここの宿はテニスコートを備えたコテージで、6人用ですからゆったりです。歩いて1分の本館には温泉を引いた大浴場があって、これがまたいい湯なのです。当然、今回の私たちにテニスコートは全く無縁です。
料理の担当などを分けながら、順に大浴場へ行き交代で準備します。私たちには幸運ですが宿側には残念なことに、風呂も景色も冷たい空気も、ほぼ貸切状態でした。
さあ、全員が揃ったところで宴会のスタートです。

 金目が主役か酒が主役か

間違いなく最初の主役は金目鯛です。
当然ですが、出発の前から日本酒はすでに1本(1.8L)を確保していました。そこに途中の道の駅で買った地元静岡の地酒を1本(720ml)。ビールは先ほどのAOKIさんで静岡の数量限定ビールをメンバーの一人が見つけて確保しています。もちろんウィスキーにも抜かりはありません。氷は宿の近くのコンビニで揃えてあるので万全です。

どうしたって時間が進むと酒が主役になり兼ねませんので、こればかりはどういう展開になるか不明です。

静岡麦酒
サッポロビールの静岡工場謹製の数量限定ビールです。

せっかく静岡に来たのですから、風呂上がりの1杯にはこれでしょう。喉通りもよくたまりませんね。静岡気分が増してきます。

次はいよいよ日本酒です。

1月終わりに千葉の柏の葉キャンパスでのイベントで知ったお酒をメンバーの一人が今日のためにわざわざ用意してくれました。

かしわ純米(茨城)
・ 日本酒度: +3
・ 酸  度: 1.3
・ 精米歩合: 60%
・ 売  価: 2,100円(税込)/1.8L
千葉の柏にある「マスヤ酒店」さんが1983年からオリジナルのお酒として、茨城の酒蔵の協力を得て発売している「清酒かしわ」シリーズの一つです。先のイベントで気に入った故に今回登場となりました。
燗にして飲みました。麹の香りがほのかに立って、米の旨味が広がるいい酒です。全員で[旨いなあ!」と絶賛でした。料理を邪魔することなく、お互いが引き立つような相性です。

この頃には料理も酒もピークです。脂が乗った金目鯛の旨さも一際で、煮付けの味わいはやはりピカイチ。やはり外せないメニューです。

伊豆の地酒あらばしり辛口(静岡)~万大醸造合資会社
・ 日本酒度: +4
・ 酸  度: 1.4
・ AL度数: 15~16未満
伊豆で唯一の地酒蔵元だそうです。伊豆に来たのですから伊豆の酒を飲まないで帰ると筋が通りません。ここはしっかりと地元を立てましょう。

面白いのは銘柄名が「あらばしり」で、こう表記するには造りもあらばしりのはずでが、「あらばしり」とは言っても原酒ではないようで、すっきりさらりとした味わいでした。どっしり感のあるタイプかと思っていたので、ここは認識と違いました。むしろ燗にするにはこの方が好都合だったと思います。

後で調べてわかったことで、道の駅では1,000円(税込)/720mlで買った酒でしたが、本来は720円(税込)ほどのもののようです。残念ながらこの辺の扱いには気を付けた方がいい。1,000円なら高い!720円なら相場だと感じます。二度と買ってもらえないようではつらいですから、その場限りではなく、育てようとする日本酒の売り方をして欲しいものです。
案の定、これも終わってしまい、本館の売店で日本酒を買い足そうと出向くものの日本酒は置いてなく、結局は口直しの缶ビールを追加することになったのです。
こうして、あるだけ飲み尽くしてしまう無敵の酔っ払いを作りながら、伊豆の夜は更けていくのでした。