居酒屋での無銭飲食の厄介な扱い

 無銭飲食と食い逃げは別物

居酒屋で長く仕事をしていると、かつては「食い逃げ」という憂き目を見る話はいくらでも聞きました。近頃では滅多に聞くことはなくなりましたが、果たして現状はどうなのでしょう。
ここでひとつ混同しないように「食い逃げ」と「無銭飲食」は違うということを確認しなければなりません。無銭飲食のはずが、結果的に食い逃げできたということはあるでしょうが…

最近では悪質な無銭飲食は先ずないかも知れません。しかし、以前は他の店の仲間たちとよく話題にしたものでした。

そこで今回は「無銭飲食」についてです。
これはほとんどが確信犯で、逃げ出そうとはしません。むしろ堂々と悪びれずに「金が無い」と言います。寒い季節になると増えると言われていました。
これには2つのパターンがあるのでお知らせします。

 その1・店を諦めさせる作戦

飲食は程々にして3,000円ほどに収める。

本人に誰か身内の連絡先をきいても教えることはありませんし、連絡できる人もいないのかもしれません。彼らは本質的に謝罪することはないのです。当然、無銭飲食だと警察に通報すると、警察は来てくれます。そして当事者と一緒に店長も事情聴取で管轄の警察署まで飲食した伝票を持って同行しなければなりません。そこで、お巡りさんもちょっと面倒そうに「被害届を出しますか?」となります。「面倒だから止めます」となるとそれっきりです。

結局はたっぷりと2~3時間以上かかって、しかも、後から取り立てたという話は大概の場合ありません。
それを知る店長やオーナーはその時間の無駄と金額を天秤にかけて、通報しないことがあるのです。
「明日持ってきてくれ、今日はもう帰れ!」となってしまいます。過去には「二度とくるな!」と、引っ叩いて蹴飛ばして放り出すという話もよく聞きました。しかし、それは本人にとっては望んで求めた結果に他ならないのですから作戦成功です。

 その2・二段構えの作戦

次々に注文して食べまくる飲みまくる。
一人で来て、通常の客単価の3倍にはなりそうな勢いで飲み食べまくる。こんな場合は途中でおかしいなと気づきますが、そこで「お金持ってますか?」とは聞きにくいので被害が大きくなります。

こういう人は見逃してくれればある意味ラッキー、警察に突き出されれば暖かいところで寝られて食事ももらえるという二段構えの魂胆だそうです。常習ではあっても微罪なので本人は痛くも痒くない。むしろ宿と食事が提供される方が有り難いのだとか。

ところが飲食店・居酒屋にとってはたまったものではありません。突き出して余計な時間を取られた上に、もちろん代金の回収などできるわけもありませんので最悪です。
しかし、警察からの指導では「絶対に見逃さないでください」と言われます。

さて、私たち飲食店・居酒屋はどうすれば良いのでしょう。入店時に判断するしかないのが現状のようですが、これは今の時代不可能に近いように思います。ホームレスなどと言われ、世間の隅っこに追いやられた人たちは、決してそんなことはしないはずです。

 私の2回の経験談

ここで自慢ではないですが、これまでに私が経験した無銭飲食を紹介します。

 してやられたりの巻

30年以上前の2月だったように記憶しています。この男性は普通の身なりで、何の違和感もありませんでした。深夜1時過ぎて一人で来て3,000円ほどの飲食をし会計時にお金がないと言います。免許証は?住所は?身内の連絡先は?ときいてもまともな返事をしません。布製のバッグを持っていたので、中を開けて見せてというと見せてくれたのですが、大したものは入ってないようでした。
本人は「明日お金を持ってくる」と言うのです。

当然そんなことを信じる訳がありません。そこで「そのバッグを明日まで預かるからそれでいいか?(※本来は勝手にそんなことをすると違法です)」と聞くと、「わかった」と答えました。

信じられないけど仕方ないか、という思いでそのまま帰らせました。すると20分ほど過ぎて店に電話が掛かってきたのです。
「○○交番です。今ここにいる男性が、そちらの店にカバンを取られたと言っていますが本当でしょうか?」
こちらから風体を確認すると先ほどの無銭飲食の男です。そこでいくら無銭飲食でと事情を説明しても無駄でした。本来勝手に預かってはいけないものを預かっているのです。
「本人が今からそちらへ行けば返してやってくれますか?」となります。
結局はこちらが悪者にされただけで、渋々返してやることになりました。

当然、翌日以降も来ることはありませんでしたので、結果的には「食い逃げ」されたということになります。

 迷惑だらけ巻

どこかの変人で通りそうな、長いアゴ髭を蓄えた風貌のひとりの年配者が深夜にふらりと入ってきました。
瓶ビールと料理を少し注文し、2本めのビールを半分ほど飲んだところで、消え入りそうな声で「お会計」と言うのです。確か2,000円ほどだったと思います。金額を告げると、また小さな声で「お金がない」と言います。
「名前と住所を教えて?」ときくと「神様が…」と言い始めました。
何度尋ねても「神様が…」と繰り返すだけで同じです。

これでは埒が明かないと思った私は、覚悟を決めて警察に行くことにしました。幸い店を出て20秒ほどのところに交番がありましたので、ひとりの従業員の手を借りて一緒に連れていきました。

「名前と住所を教えてくれれば、あきらめて今日は帰しても良いんだけど、神様が…ばかりではね。」と伝えると、後はお巡りさんの出番です。

「バッグを開けるよ」と言って、お巡りさんは中を確認しています。もちろん財布や身分証明書のようなものは何もなく、出てきたのはどうでもいいものの他は、近くの新興宗教団体の発行する冊子だけでした。お巡りさんも手を焼いて、深夜にもかかわらずその新興宗教団体に電話をしたのです。
「神様が…」とリンクしてしまったのです。先方にいろいろと説明してくれた後に電話を切り、「今から来てくれるそうです」と報告をくれました。

間もなくみえたその代表者の方は、本を見ながらこう言いました。
「この本は名前は似ているけど、私たちとは別の団体です。この人のことも全く覚えはありません。」
お巡りさんも弱ってしまいました。
するとその代表者の方は「わかりました。違うとは言っても、ここは私の方でお支払いします」と申し出てくれたのです。
私としては非常に心苦しいところでしたが、有り難く受け取りました。
単に無銭飲食と言っても、これほど迷惑極まりない人もいないでしょう。
さあ、この2件の話は30年以上前の話ですが、果たして今の時代はどうなのでしょう。今でも無銭飲食は多発しているのでしょうか?

コメント

  1. SE より:

    今日無銭飲食されました、やはり難しいのですね(ーー;)
    警察に通報したところでお手上げなのはわかってましたが警察に言いました。が、気分悪いまま終わりました。悔しいです凄く、次はないと願ってますが、、同様の事はあるのですね、同じ日本人としてショックです(⌒-⌒; )

    • oh@tiger より:

      SEさま、コメントありがとうございます。
      私も今でこそ自分のことを笑い話のように言えますが、当時は悔しくて悔しくて、当分の間頭から離れることはありませんでした。
      お金の問題よりも裏切られたようで、遣りどころのない思いで一杯になりました。
      そんな意図で来店されているお客様がいることなど疑っていては、本来の仕事になりませんからね。
      飲食業は人々にとって無くてはならない存在です。陰ながらSEさまを応援させてもらいます。今回のことに負けず、大成功されるようにお祈り申し上げます。