四ツ谷の居酒屋 赤札屋

 四ツ谷しんみち通りの土曜日事情

5月も終りに近い土曜日の15時、急な待ち合わせでJR四谷駅に来ることになった。待ち合わせと言っても気のおけない友人なので、特別に場所を選択する必要もない。


お互いにコーヒーでも飲みながら午後のひと時を過ごすという洒落はない。当然のように酒絡みの店を探すことになり、駅近くのしんみち通りへ立ち入ることになるのは自然の成り行き。果たして、土曜日の15時に営業中の店はあるのかと半信半疑ではあったが、程なく右手に現れたのが「赤札屋」。どこかで見たような看板で、しかも如何にも安そうな居酒屋だ。

迷うことなくこの玄関をくぐることになるのだが、すでに先客はいた。若い男女の5人組。なかなかに盛り上がっているということは、すでに開店から時間は経過している雰囲気だ。

入口すぐ左には2人用のテーブル席が2組、右には4人掛けのテーブルが3組。私たちが2名だと告げると、「カウンターでお願いします」とやや奥行きのある壁際のカウンターに通された。もちろん不満はない。

そのカウンター席の後ろには6人掛けと4人掛けの席があり、一番奥にはカウンター席が3席?と4人掛けのテーブル席が2列に2組づつ。奥のカウンターに1人と私たちの後ろに5人、これがその時点での客数だから、殆どの席が空いている状態。

自分たちの注文はさて置き、驚いたのは私たちが入店して30分ほどの間に2組の団体客と他の常連さんらしい人たちでほぼ満席になったこと。要は全部で50席ほどの店が土曜日の午後、アッと言う間に一杯になったことがあまりに意外だった。

確かに、最近はどこへ行っても、早目の時間から営業している居酒屋が増えた。しかし、その需要がどうなのかというのは中々見えてこない。ところがこの四ツ谷に歴然と存在している。ある意味、この四ツ谷は住宅街ではなく、むしろビジネス街。それであっても土曜日の午後、早い時間にこれだけの人が酒を求めてこの店を選んで来た、そのことが現実。

もちろんこの日の団体客は地元の人たちではない。その現実は、予約もないのに私たち2名をカンター席に案内した従業員の対応を見ると、これがいつもの土曜日なのだろうと想像がつく。
メニュー単価からざっと見ても、17時までに8万円の売上はこれで確保できている。のんびりと17時開店を決め込んでいる店舗との差はここにある。

 赤札屋のメニュー事情

この赤札屋、恐ろしいメニュー構成だ。
酎ハイは100円、アジ刺とイワシ刺は210円。ポテトサラダが380円というのを見て、違和感を持つことになる。地酒の澤乃井(東京)、高清水(秋田)はグラスで280円。これは実質120mlくらいだが、それでも破格。

熱燗は1合190円、2号で380円というのも飲んでみて良い意味で納得した。この値段なら文句ない。この「1合190円、2号で380円」の「合」と「号」は私の誤記ではなく、メニューに書いてあった通り。まあこれは赤札屋さんのお愛嬌というところと理解したい。

私たちは刺身を注文することはなかったが、隣のお客様に提供されたものを観察すると、他の居酒屋で提供されているものと遜色ないように見えた。

本来は美味いだとか、不味いだとかを語る必要があるのかも知れないが、値段を見る限りは自分たちが食べたものを見ても、なんの問題もないし、むしろ値段から見れば驚きに値する価値がある。

ただし、接客に関しては、2人共が外国人だし、細かいところに気づくわけでもない。調理場の中までは確認できなかったのでその点は不明。ところがこれは当然で、そんなことに経費をかけていてはこの値段を維持することは不可能だ。
四ツ谷駅の南側には上智大学がある土地柄。その学生たちはこの店に来ることはあるのだろうか?

最近いろいろと話題に上る「せんべろ」という言い方は、私には使いたくない言葉なので使わない。いわゆる激安居酒屋で価格と比較してこれだけの料理の品質を担保するのは簡単ではないはず。だがしかし、サービスの点でこれでいいのかと問えば、ここが一番の分岐点になるように確信した。

今後は人手不足で飲食店が次々に廃業閉店するだろう。
料理の問題も大きいが、誰が注文を聞き、商品を運び、価格に付加価値を付けられるのかを心配する自分がいる。
安く提供することと継続して満足を与えることはリンクするのか?
お客様が求める飲食店は、居酒屋はどんな店なのか。飲食店は早急に未來の自分の姿を見直さないと、長続きできない時代がついそこまで来ている。