長野の古民家と地酒

 地酒に出会う機会

5月に長野県伊那の箕輪町にある古民家「箕澤屋」を訪ねた。その際、私たちが打合せをしている間に、同行していた別のグループが近くから調達して来たお酒がまさにこれ。
夜明け前純米吟醸生一本しずくどり生酒
株式会社小野酒造店
アルコール度 16
精米歩合   55

生酒らしい甘みを含みながら、芯にはキリッと〆る辛さを感じる。16度という数字以上に力強さが伝わってくる。ふわっと広がる香りは若いブドウのようだが、酸は穏やか。

ふだん東京にいると地方の地酒を手に入れることは意外に難しくはない。もっとも何でもという訳ではなく、その酒蔵の主要銘柄は揃っているケースは多いが、季節物や地元中心のブランドなどは当然に限られる。

地元で最も消費されているお酒が、東京まで来ることは先ずない。だからこそ、地方を訪ねる時にはその地方のお酒で地元の人によく飲まれている銘柄を楽しみたいと思うもの。更に欲を言えば、酒蔵まで訪ねて買い求めることができれば申し分ない。

今回は仕事で訪ねたわけで、そんなお酒との出会を求めて来たのでないだけに、他の同行者が探してきてくれたことには感謝なのだか、心の底に嫉妬のようなものが幾分淀んでいる。
実は、あろうことかその同行者は2軒の酒蔵を回って四合瓶を5本も揃えてくれたのである。
小野酒造店さんの「夜明け前」を4種類と、合資会社宮島酒店さんの「信濃錦」が1種類。
こうして買ってきてくれたことで出会うことができた。
・ 夜明け前・純米大吟醸、純米吟醸、純米、にごり酒
・ 信濃錦・金紋純米(酒米の金紋錦使用)


細かな紹介は先の1品のみするが、バラエティ豊かに揃った。

 古民家には地酒が似合う

古民家に入ると外から見る以上に、年月の厚みが空気の色合いとなって降りてくる。古民家が最初から古民家となったわけでないのと同様、地酒と言われる日本酒は最初から地酒として造られたわけはない。地酒という名で区別しているのは私たちがその出処を地方に求めているからに過ぎない。

もともと日本酒が造られた背景を見ると、全国区になる目的など薄く、自前で配達できる範囲で飲んでもらおうと始めたに違いない。

小野酒造店は元治元年(1864年)創業。
宮島酒店の創業は明治44年(1911年)。
それぞれ小野酒造店は154年、宮島酒店は107年の歴史があるということになる。
古民家箕澤屋ホームページより引用:
元々、江戸時代の豪農の屋敷であった箕澤屋(旧小原家)は、江戸時代末期、1861年(文久元年)に再建されました。
ということなので古民家は157歳。
同じ地元で長い歴史を紡いできたもの同士、同じ空気の中に置くと、語り合い醸し出す味が必ずある。
改めてその空気を共有できた自分を幸せ者だと思う。

最後にひとつ言い添えておかねばならない。5本揃った中で評判が良かったのは肩書のない純米酒2本だった。

古民家の蔵の横にはこんなものまである…