東京都受動喫煙防止条例の可決制定

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 飲食店の死活問題

東京都条例で受動喫煙防止条例が2018年6月27日の都議会で可決されました。

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条例なり法律なりというのは文字にしたものを読むと、分かり難くするために書かれたようにしか思えませんが、これも誤解を排除するための細かな部分を規定するには仕方ないのだと理解しましょう。
そこで、あちこちの記事などを参考にして私なりに「意味」をどう理解するかという内容で話を進めたいと思います。

 飲食店の置かれる立場

結論を先に言えば、私はこれを概ね評価します。失礼ながら、小池さんは良くやったなあ!と。国会で議論しながらいっこうに進まない法案と比較してみると、案外わかりやすくなります。
私はあくまで飲食店の立場で店がどうなるのかという視点でのみ、この問題を鮮明化したいので他の施設に対しては何の知見もないことを前提としておきます。
これには時事通信さんの記事がわかりやすく以下の表にしてくれていました。
【図解・行政】東京都と国の受動喫煙防止案の違い

画像は時事通信さんからの引用

大まかに言えば、この決まりを定めるに当たって着目したのは何かということが国と都では大きく違っています。そして、私が評価するのはこの違いの部分が一番大事なのです。

飲食店に対して国は「事業者」に、東京都は「人」に注目してそれぞれの法案条例案を起草したことは間違いありません。

国は、飲食店の事業者の将来や思惑とタバコの製造販売に関わる事業者の立場から見た内容。

東京都は各施設(飲食店)を利用する非喫煙者と従業員(社員とアルバイト)の立場から見た内容。

私は国会で取り上げられた法案は、「受動喫煙」の問題について、従業員や喫煙習慣のない人の立場から見ているとは思えない内容ばかりだと感じていました。はっきりと言えば、喫煙する者として「ここまでは我慢して吸わないでいてやる」と言わんばかりの内容だと。
しかし、この視点の違いはその後に見る世界を大きく変えます。この違いの意味をしっかりと把握し理解することが大事だと私は確信しています。

 東京都の飲食店の在り方

2020年4月1日施行、とあるので約2年近くの準備期間があります。私は法律の専門家ではないので、間違っていたらお許しください。正しくは専門家にお尋ねください。
いくつか調べた結果のこれからの東京都における飲食店(主に居酒屋)の在り方を具体的にしてみます。
・ 飲食店はすべて店内で喫煙することはできない。
・ 但し喫煙専用室を設けることはできる(その中での飲食は不可)。
・ 排煙設備を設けた分煙席ならば飲食をしながらの加熱式タバコは可。
・ 従業員のいない店舗はその限りでない(禁煙喫煙の選択は自由)。
  「従業員がいない」とは同居する親族のみが仕事に従事していること。
  父ちゃん母ちゃんでやってる店は喫煙可にしてもいいですよ、ということ。

この規定については細かいところに間違いがあるかも知れませんので、大まかに捉えて、実際は専門家に確認してください。

飲食店の規模や経営母体の資本力で規定するのは差別や優遇になると私は考えていましたので、その両方共が原則的には比較対象になっていません。資金力のあるところは喫煙者にとって嬉しい設備を整えることができますが、他はできないというような切り捨てからは少しばかり距離があると思います。

更に一番大きなことは、従業員がタバコの煙の中で仕事をすることがないということです。喫煙者の従業員であっても、喫煙専用室のない店舗では店内で喫煙することはできないということになります。加えて、20歳未満の者は喫煙専用室に立ち入ることも禁止なので、20歳未満の従業員はその部屋の清掃に入ることさえ許されません。
これを不自由というか正当というかが、その営業者の意識を量られることになります。

 国はどうする?

私は非喫煙者です。40年前の学生時代と比べると、私の周りは90%の喫煙率から10%に減りました。世の中はそれほどに変化しました。しかし、一度飲食店従業者の喫煙率を調べてみるべきだと考えているのですが、もしかすると世間の数字の2~3倍のような気がします。これまで長く飲食業に携わってきた人たちの喫煙率は極めて高いように感じています。

世界で先進国と言われる国ほど喫煙率が低いことを思うと、飲食に携わってきた私も含めて、飲食店の課題として飲食業が水商売という言葉から離れて世間に認められる立場を築く鍵はこの喫煙率の高さを代表とした辺りにもあるように思えて仕方ありません。翻って言えば、この中に潜む実態こそが暗黙に人手不足を解消できない一つの理由とも思えます。世間一般の価値観と自分たち飲食店従業者の価値観の比重が違いすぎることに繋がります。

世間のシガラミや利害のやり取りの中で、国はどう動くでしょう。そしてそれを国民はどれほど理解するでしょう。
これまで国(≒自民党)の受動喫煙防止法案を見ていると、「従業員」への配慮などどこにもないのが事実です。そしてその点を私は指摘してきました。本筋がどっちを向いているかは明白です。

そんな目線で提出した法案が現在の世界の価値観の中で認められるわけがないこともわかっていながら提案してくる本意はなにか?政権政党が外せない問題がそこにあるのです。

 人手不足の根っこ

昔から、飲食店は弱い立場の人たちの多くが就業したり起業した業界です。今でこそチェーンの上場企業も数多く、その体は感じにくくなっていますが、本質は変わっていません。まだまだ、世の中から弾かれた思いで従事している人もかなりいそうです。

未だに飲食店の人手不足は解消する目処さえ立たず、留学生・就学生の外国人に頼らずには成り立ちません。そして彼らの多くは受動喫煙を避けられない環境で働いています。雇用側は、お客様がタバコを吸いたいなら、従業員はそれを認めた上で奉仕しろと言いたいのだとしか思えません。

「お客様は神様です」と言った有名な人がいました。しかし、私は長く居酒屋の仕事に携わりながら、一度たりとそう思ったことはありません。それは大切にしないということではなく、「信奉や隷属しない」ということ。お客様と店と従業員はトライアングル。三者がそれぞれに対等に成り立ってこそ三者が生きると考えています。お客様の我儘だけを優先する必要はなく、店の都合だけを考えて従業員は仕事する必要もなく、そしてお客様にはその上で気に入らなければ店を選ばない権利があるのです。

これまでは従業員の受動喫煙の犠牲のもとに成り立っていた飲食店。客席をお客様のために禁煙・喫煙と分けた所で、従業員はどちらへも行かなければなりません。それを良しとした上で人手不足を解消しようとは、虫の良すぎる話でではありませんか。
だからこそ私は思います。自分たちから禁煙を謳った店造りをしようと!
さあ2020年4月、東京の飲食店はどうなっていることでしょう。