お客様のタバコを買いに行く

居酒屋のタバコ

最近の居酒屋は中型以上の規模であれば、店内にタバコの自販機を設置しているところがあります。現在のタバコ事情から言えば、これも減っていくのもやむを得ない流れかもしれません。

喫煙者が肩身の狭い思いになり、喫煙場所さえなくなる傾向にありますが、辛うじて分煙にはできても、店内全面禁煙にできない飲食店がほとんどです。そこで、タバコの自販機のない居酒屋では、店で何種類かを買い置きして、お客様の要望に応えてお譲りしていることは当たり前に見かけることでしょう。店内が禁煙でない以上、こういったサービスは当然のことと思えます。

しかし、店の直ぐ近くに自販機があったり、コンビニがあったりすると、買い置きをしない場合もあります。ほとんどは、買い置きがただ面倒だったり、「すぐそこで買えますよ」とお客様に教えてあげればいいと考えてのことだったりでしょう。公共の場での喫煙に対しての規制の問題は一旦横に置くとして、タバコをどう扱うかは、居酒屋にとって結構重要なことです。

今では愛煙家の比率も減り、店の立地から1分ほどのところにはたいていコンビニもあります。昔と違って、近くに買える所があれば、私はあえて買い置きしませんでした。それは必要なお客様がいれば、可能な限り従業員が代わりに買いに行ってあげることを前提で店造りをしたからです。サービスの良し悪しではなく、どんな意味があるか、少し考えたいと思います。

お客様が居酒屋に求めるもの

今や居酒屋は単に居酒屋業態と呼んで一括りにできるほど、分かり易くはありません。やきとり居酒屋、おでん居酒屋という方が良いくらいに、何でもかんでも居酒屋になってしまいました。すでに、餃子居酒屋(王将)、ラーメン居酒屋(日高屋)、牛スキ居酒屋(吉野家)と言ってもいいくらいに夜は居酒屋に変貌しているところもありますからね。

お酒をあまり飲まなくなった世代の方と、よく飲み歩いた世代の方では、居酒屋に求めるものが幾らか違ってきているように思います。かつてのスタイルで続ける喫茶店は激減し、ドトールさんやスタバさんのようなセルフの店が当たり前になったですから、40歳以下の方では居酒屋だって違ってきているに決まっています。

しかし、私はここで居酒屋を以下のように大きく2つに分けてみたいと思います。

  1. とにかく安く仕上げたい
  2. ある程度はサービスを受けたい

 1.とにかく安く仕上げたい

  • 料理の味はほどほどで良い
  • 従業員はいれば良い
  • それなりに食べて飲めれば良い

こういったところでしょうか。もしかすると従業員にもあまり構われたくない人たちで、店造りとしては大人数には不向きでしょう。料理も飲み物もすぐに出てこないと厳しいが、何ごともわかりやすい居酒屋。
これは、今後本気で開発すればヒットする業態になるかも知れません。むしろこっちに進もうかなと、躊躇している経営者がたくさんいるようにも思います。システム化を徹底すると、100席の居酒屋でも、従業員は1人で間に合う店造りも可能になりそうです。

 2.ある程度はサービスを受けたい

  • 料理はやっぱり美味しい方が良い
  • 従業員に少しは期待したい
  • 季節感や特別感も欲しい

今まで一般的に居酒屋と呼ばれてきたスタイルで、レベルの違いはあれど求めるものにこの3項目はあるよ、とお客様も店も相互理解しているケース。どこでどう差別化するかで、店側が常に右往左往していて、どっち付かずになっていることもある、悩み深き居酒屋。

人のために動く価値

 居酒屋の肝

先ほどの1のケースに踏み込みかけたところがありました。
均一の低料金で端末を操作しての自己発注を取り入れたまでは良かったのですが、より徹底してではなかたようです。普通の居酒屋であるにも拘らず、従業員が呼ばれるまで奥でたむろしているようなところは、早くに1のケースに移行することを本気で考えた方が話が早い気がします。

1のようなケースは、居酒屋の仕事の肝である「人のために動く」ことを基本的に捨てた店、と私にはそう見えます。居酒屋、むしろ飲食店と呼ばないほうがいいのかと。本来の居酒屋が、お客様に呼ばれる前に気づいて要望に応える、という本質は何処へやら。こんな店が増えていることも確かです。

お客様の求めることが、すでにこの本質から離れているのだとしたら、これは真剣に将来を再考する必要がありますね。

 タバコを買いに行く意味

従来型の居酒屋で営業するのであれば、離れられないことがあります。
最初に戻って、必要に応じてお客様のタバコを買いに行くということは、この基本に基づいたものです。昔々であれば、「お釣りは要らないよ」というセリフをお客様からもらったものでしたが、今の日本でそれは先ずありません。

お客様にしても「買ってこい!」と言うような方はいませんし、自分で買いに行こうとします。でも、ここで少し考えてみることです。タバコを吸うお客様の様子に注意していれば、吸いかけのタバコの箱の本数が少くなっていることに気づきます。それに気づけばしめたものではないですか。

少し手が空いた時に「タバコ買ってきましょうか?」と聞いてあげればいいだけのこと。もしも気づかなくて、忙しい最中に「タバコある?」と聞かれたら、「少し手が空いたら買ってきますよ」と返事することです。

タバコのことは例に過ぎませんし、効率よく日々の業務を進める必要はあります。しかし、誰かが自分のために動いてくれることを嬉しく思わない人はいません。この姿勢を忘れたり、崩したりしない限りは、現在のスタイルの居酒屋は絶対に生き残ると信じてます。

これから先、どう変わっていくのでしょう。