ウィスキーハイボール 窓際からの大復活

 サントリー角ハイボール

Whisky&Soda
本来はこう呼ぶものだそうですが、日本では古くから「ハイボール」と呼ばれて親しまれ好まれてきました。オールドファンがボトルキープをして通って水割りを飲むスナックが主流になる前、ウィスキーを飲むには「バー」や「パブ」が中心だった頃の主力メニューのひとつがハイボールです。
ウィスキー・ハイボールが改めて注目されてから、もう10年近くになります。
ずうっと長くウィスキーが売れない時代が続き、居酒屋からも姿を消すんじゃないかと思っていたくらいですから、それ以前はウィスキーにとって窓際の時代でした。

以前からCMのセンスでは抜群のサントリーさんが「角ハイボール」を仕掛けたのが、2008年。しかも、従来のハイボールの飲み方ではなく、新しいハイボールとして「角ハイボール」を提案したのは流石です。

これもマーケティングの成果だというから、市場調査は侮れません。

しかし、市場調査の結果でヒット商品が必ず生まれるならば、誰も苦労はないはずです。調査結果からヒット商品に結びつけるには、言い知れない努力と並外れたセンスが大切なんでしょう。CMでも評判を呼ぶということは、同じことなのかなと想像します。
しかしきっと、2006年か2007年から必ずテスト販売をしていたはずです。それにはサントリーさんの「プロント」辺りが適当かとも思うものの、そんな単純なものではないのでしょう。

サントリーさんが産みだしたのが「角ハイボール」という飲み方。

角ジョッキ(オリジナル製品=容量375cc)にレモン一切れを絞る。そこに氷を目一杯入れて、サントリー角瓶を30cc入れ、そっとソーダ(炭酸水)120ccほど(場合によっては150ccほどになるかも)を注ぎ、静かに数回マドラーで混ぜる。ウィスキーは水より比重が軽いため自然に上へと浮かび上がりながらソーダと渾然一体となる。
このレシピに注目です。

ウィスキーと炭酸の割合が1:4。レモンを絞り入れる。このふたつが重要です。
角瓶のアルコール度数が、ざっと40度と考えれば、角ハイボールはアルコールが7~8度の飲み物になり、氷が入るとさらに薄くなりビールと変わらない程になる。しかもレモン果汁も入っているので、その分飲みやすい爽やかさがプラスされる。

これこそ市場調査の出した、今に好まれる飲み物の黄金比の実態だったようです。

 懐かしのハイボール

実は私は、ずっとウィスキーハイボールが好きだったのです。

今のようにジョッキで飲む時代ではありません。
お酒の飲み方も時代とともに変わるのはやむを得ないことですから、細かいことで今飲まれているハイボールを否定する気はないし、何が正しいと主張する気もありません。
私が好きなこともあって、私がいた店では「懐かしのハイボール」という名称で、従前通りのレシピのウィスキーハイボールを長く扱っていました。
少し大きめのタンブラーに、45ccのウィスキーと炭酸が2.5倍(約110cc)くらいです。もちろんレモンは入れません。アルコール度数にして11~12度です。

先ほどのサントリーさんの市場調査の前までは、ウィスキーの美味しい飲み方として定着していた黄金比率は、この1:2.5のアルコール度数12、だったそうです。しかし、最近(とはいっても10年前ですが)の市場調査の結果では好まれる度数が8度だった。


こんな結果が世に送り出す商品を変えてしまうのです。

人の嗜好や流行りとは何とも理屈通りには行かないもの。
そこで、当時私のいた店でも、少し挑戦してみることにしました。使っているウィスキーはもちろん角ではありません。
流行りのせいで、「ハイボールちょうだい!」というお客様が増えてきた頃です。
それまでの「懐かしのハイボール」はそのままにして、「今どきのハイボール」というメニューを別途に並べてみました。ジョッキを使って30ccのウィスキーにレモンも加え、薄めに作るハイボールです。もちろん売価は同じ。

お客様からは「どう違うの?」ときかれます。

「濃いか薄いか、レモンがあるかないかの違いです。」と答えると。
「じゃあ濃い方をちょうだい!」という方が多かったのは、読み通りでした。

 ひとつの結論

両方飲んだお客様にききました。
「どっちが美味しいですか?」
するとほとんどの方が「濃いほうが美味しい」と答えるのです。

ここが鍵なのでしょう。

しばらく前から、アルコール度数の低い酒類が好まれています。
その意味する所は、ここでは考察を控えます(とはできない言い訳か?)。
ところが好まれているものが美味しいものとは限りません。
  • 飲みやすいもの
  • 美味しいもの
これは同じようでも全く違うということです。
私たちの周りで様々に絡み合う食べ物や飲み物の本質に気づかないまま、案外に好き勝手にコントロールされているのが、現実なのかもしれません。
そう思うと、私たちは毎日をなすがままに、誰かのシナリオ通りに送っているということになるのでしょうか。こう決めつけると味気なさすぎて、美味しいものも喉を通らなくなるのですが…

ハイボールでも飲みながら、見つめてみるとしますか。