「つぼ八」さんの変遷と時代の変遷に思う

 「つぼ八」買収のニュース

最近のニュースで「つぼ八」グループが「やまや」さんに買収されたという内容が報じられた。
居酒屋業界の再編成が改めて始まったような気配がある。

現在の居酒屋チェーンの変遷を見るにあたり、つぼ八さんは絶対に避けて通れないだけの実績を作ってきた。このところ利用させてもらったことがないので現状の店舗の内容は私には詳細がわからない。

40年近く前、居酒屋ブームが世間を席巻し始める頃、チェーンの居酒屋では「養老乃瀧」さんが最も有名だった。東京ではそれに次いで「村さ来」が店舗数を伸ばし、その後は群雄割拠の時代に入る。

その中でも、北海道出身の8坪から創業した「つぼ八」が関東に進出し人気ナンバーワンになり、それまで北海道の居酒屋といえば関東では「北の家族」だったのが、勢力図は入れ替わってくる。つぼ八は炉端焼きの雰囲気を残しながら、サワーブームにも機敏に対応し、当時の若者はそこに集うことになった。

 居酒屋チェーンの数々

誰もがご存知の「和民」と「白木屋」は「つぼ八」のFC店としてスタートし、その後はそれぞれ脱退・独立して自分のチェーンを作り上げるこになった。
その当時、独自のシステムでFC加盟ではなく、いわゆる社員の独立を基本に暖簾分けのような制度でFC加盟店と直営店を増やしていたのが「庄や」であり、ひとり我が道を行く感があった。

やがて次々にいろいろな居酒屋チェーンが現れたが、現在ではそれもかなり整理統合されてきている。

「やまや」さんは酒類と食品を扱う酒屋さんで、店舗も広域に展開していて、「チムニー・はなの舞」グループの他、マルシェ(八剣伝、水滸伝など)を系列店に置いている。その「やまや」さんがつぼ八さんのグループを買収したのだから、店舗数としてはかなりの規模になる。さらに、その「やまや」さんはイオンの傘下だから、イオングループとしての居酒屋への影響力は相当なものになったはずだ。

どんな居酒屋であろうと、超大手のチェーンと同じ土俵で勝負していては敵うわけがない。仕入のスケールメリットを考えただけでも誰もが理解できる。

居酒屋だけでなく飲食業そのものが、今では人気店が身売り・買収されたりして勢力図は常に塗り替えられている。
どこの店舗に行っても、ある程度均一化されているチェーン店は利用する側にすれば一定の安心感がるのは確かだ。
つぼ八さんがチェーン居酒屋の革新的パイオニアとして切り開いてきた地平は、伝説的なことも含めて尊敬に値する実績がある。
そのつぼ八さんがこうなった。

 時代は進んでいる

今の居酒屋業界は「省人手」に邁進しているように見える。要はより少ない人数で運営することを目指しているとしか思えない。
より安いものばかりが持て囃され、そうでなければ客数が取れないと信じているかのようになってしまった。であれば削るのは人件費しかないのも事実。

しかし、果たしてこれが消費者が飲食に望むものなのだろうか。もちろん、支払い金額が少ないことを嫌がる人はかなりの少数派だとは思うが、そうであればこそ、求めるのは「安い飲食」なのだろうか?自分が普段スマホを操作しているのと同じように、テーブルに設置されたタブレットに自ら発注し、届くのを待つのが飲食店に行く目的なのだろうか?

私の勝手な推測で言えば、少しでも安い支払いで出来るだけ沢山の酒を飲みたいという時代は、既に終わっている。おそらくそれが第一だとする居酒屋チェーンは遠くない将来に隅に追われるとしか私には考えられない。

「接客」という飲食店での最も大切なものを置き去りにした店は、今後の存在価値が別の場所に置かれるようになる。

〇〇さんのサービスを受けたい、△△さんの料理を食べたい、が改めて中心となる時代は遠くないよいうに思う。しかもそれは決して高級店ではなく、個を売りにする店舗。必ずしも☆の数の多い店でもなく、誰の身近にもそっと存在するものでしか用をなさないはずだ。

どんな居酒屋が生き残っていくかは誰にもわからないし、選択肢が多いことは歓迎されるに違いないことだ。しかし、チェーン店であろうと個人店であろうと、お客様も従業員も機械と向き合う仕事ではなく、人と向き合う仕事の価値をもう一度見直した方が成功に近い飲食店になると私は確信している。