駿河屋賀兵衛の地酒 その1

 静岡の地酒「英君」

塩辛専門店のメーカー駿河屋賀兵衛さんが始めた秋葉原の居酒屋で、そのメーカーは静岡が地元だという。
駿河屋という名前からしてそうだから、手始めは静岡の地酒にしよう。
おあつらえ向きの銘柄があるではないか。
英君 辛口純米酒

近頃、吟醸酒という謳い文句に積極的な興味をあまり持てない私たちは、燗酒の醸し出す魅力に落ち着きどころを見つけている。
同時に純米酒でなければという特別な拘りもなく、精米歩合を競うことにも興味がない。
一人が一度に飲める日本酒の量には限りもあり決まってもいる。されば1本当りの単価が高い日本酒を飲んでもらう方が酒蔵にとっては助かる。従ってそちらの商品に力を入れるのは当然のことだ、とは思う。日本酒好きと言いながら、私たちは造り酒屋を一番困らせる消費者かも知れない。

英君 辛口純米酒 静岡県清水市の地酒。
これを燗でお願いしカウンター越しに何気なく見ていた。
店の若い女性スタッフは徳利を選び丁寧に注ぐと、お湯に浸けて調理用の温度計で温度管理を始めた。
よくトレーニングされているんだろうなあ…
うん、この店は間違いない。
さあ、塩辛は何が良いか… 

 改めて居酒屋を思う

「お待たせしました。」と彼女が先ほどの徳利とぐい呑を笑顔で運んで来て提供してくれたのだが、ここでぐい呑を手にとって驚いた。
何と、ぐい呑も程よく温めてくれているのだ。

これまでおそらく何百回と飲食店で燗酒を注文してきたが、ぐい呑も温めてくれた店は皆無だった。考えてみればさほど手間のかかることではないというものの、その少しの手間をかけないのがこれ迄の当たり前だった。
マスターの拘りには感動もの。
素直に頭が下がる。 

未だに地酒は冷やして飲むものと決めてかかっている居酒屋が多いのは事実で、丁寧な燗酒を提供してくれる店は非常に少ない。
燗を注文しても電子レンジで「チン!」で対流もないまま、口だけが熱くなった徳利で出してくることも珍しくない。
確かに人手を省き仕事を「こなす」という接客になってしまう居酒屋に慣れてしまったせいか、私は駿河屋賀兵衛さんでは新鮮な思いにさせられた。 

 「英君」は何処に

私は常々、飲食店は人を徹底して減らした店と、人による接客と品質を徹底して追求した店との二通りにハッキリと今後は分かれると考えている。
慢性的な人手不足の飲食業は人材の育成さえままならず、最低限の頭数が揃えば何とかなるという営業スタイルになってしまった。 
従業員が喜んで仕事をしたくなるだけの条件や環境を準備するには、3,000円ほどの客単価ではとうてい追いつかないことだろう。
働き方改革の本当の意味はどうなっているのかと、訝しく思う。

東京のような場所では飲食店の数が半減して丁度よいのではないか、いやむしろ、必然的にそうなるだろうと私は確信している。
人がいなくて店を開けられない、それでも無理して営業するとお客様の不満だらけでお客様を失うことだろう。 
そんなことを思いながら、温めてくれたぐい呑に英君を注ぐ。
まだ酒を口にする前から、思いは勝手に広がっていく。
私を含めて年寄ばかりになるこの国に、若き「英君」は果たして現れるのだろうか。

英君酒蔵
https://eikun.co.jp/sake/

英君辛口純米酒
麹米      五百万石
掛米     一般米
ALC度数  15度以上16度未満
酵母     静岡酵母 NEW-5
精米歩合  麹米 60%
      掛米 60%

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