刺身BAR かぶきまぐろ in江戸noren

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 大相撲の印象が強い両国

隅田川を東に越えた電車はすぐに両国駅に止まる。
JR両国駅の改札を出ると駅前にはロータリーがあり、右手の国技館へ向かう通りにはバーベキューの店舗が見える。
両国と言えば国技館と大江戸博物館しか思い浮かばない。30年ほど前には私が仕事をしていた会社の直営居酒屋があったのだが、土地開発の一環でビルが取り壊しになり立ち退きになって以来、私には疎遠になってしまった町だ。

両国から東京スカイツリーまで直線距離では3kmほどで、実際には散歩がてらに歩くにも苦労は要らない。道も縦横に案外規則正しく整っていて迷わずに歩くことができる。スカイツリーの西にある本所吾妻橋駅から南を眺めれば、両国から錦糸町へ向かう高架には総武線の黄色いラインの電車を望むことも容易だ。

この日は友人と会うのに両国がたまたま都合がよく、駅前のロータリーで待合せていた。
そう言えば両国には地酒をショットで飲ませてくれる酒屋さんが駅近くにあるはずだと思い出した。よく見ると改札の横、ロータリーの前に「江戸noren」という和風の土産物屋のようなところがある。入口の看板の中に「東京商店」があり、そうだここだ!と確信した。
この商業施設はまさに駅舎の一角にある。待合せにはまだ時間があったため、この建物へ入ってみることにした。

 江戸norenの土俵

玄関を入ってすぐ左には土産物のようなお店があり、まっすぐに奥まで進むと何と土俵がある。中央の天井は高い吹き抜けになっていて、広い空間の中で土俵の存在感は際立っている。
説明書きの正確な表記は忘れたが、相撲協会の監修かなにかで正確に作った正式な土俵だそうだ。

この土俵を囲んで周りを江戸・東京に因んだ飲食店がぐるりと並んでいる。
天ぷら、江戸前寿司、深川めし、まぐろ、もんじゃ、ちゃんこ、蕎麦などの店が10店ほど軒を連ねているからある意味で選び放題。
墨田区界隈の観光案内所まであるだけに、外国からも地方からも観光客には絶好な場所に違いないと思う。
もちろん、ただの酒飲みにも…
今日はこの何処かだな。

そろそろ約束の時間だ。

 刺身BAR かぶきまぐろ

友人と合った後は、結局「江戸noren」の中でその日の店を探すことになった。
ボリュームのある料理は口に余り、食事中心となると更に太刀打ちできない。
そんな中で私たちが選んだのが「刺身BAR かぶきまぐろ」
表から見ただけだったが、どうやら地酒を豊富に扱っているらしく、そこに惹かれたのが一番の理由。おすすめメニューにも酒の肴をいくつも書いてあった。

店に入ると迎えてくれたスタッフは日本語の上手な欧米系の女性だった。
実は訪ねたのはこの記事を書く3ヶ月ほど前で、今となっては料理の何を注文したかを覚えていないし、どの銘柄の地酒を飲んだかさえ思い出せない。
石川の菊姫山廃純米だったような気はすれども正確ではないが、山廃だったことは間違いないと思う。

確かにこの店には相当数の地酒のラインアップがあって迷うほどだ。
管理も大変だろうし、よく仕入れルートも手に入れたことだと思う。
ただ少し寂しかったのは3分の1ほどが品切れだったこと。メニューに打消線を入れていたが、むしろ半分ほどに銘柄を絞っても問題ないのになあと感じた。

唯ひとつ覚えているのが山廃を飲みながら注文した料理「魚の肝煮」
珍味小鉢で提供されやや強めの甘辛な味付けながら、山廃にはよく合った。
店長らしい人に聞くと「今日はクエです」と教えてくれた。
そこでさらに「もう1人前ください」とお替りを頼んでしまった。
こうして酒にも肴にもハマってしまうのである。

 東京商店

私たちはオマケと言っては失礼だが、もう一軒「東京商店」にも寄ってみた。
こちらは東京の全酒蔵の銘柄を揃えているそうだ。
店内の自販機に酒瓶がライトアップされて並び、そこには細かい酒の説明と一杯分の金額を書いている。注ぎ口にぐい呑を置き 料金を入れてボタンを押すとピッタリの量が注がれる。
画期的だ。
澤乃井にしても何種類かあるため、同じ蔵の酒を飲み比べすることもできるのはかなり珍しい。ワインもビールもあってその全てがセルフでいただける。
立呑だけに、すっと入ってさっと引き上げるには最高だ。

しかし、店の隅には燗酒用の湯煎器があって、こちらもセルフではあるが自分の好みの温度で飲むことが楽しめるのがまた良い。
カウンターでは簡単なつまみも販売している。
案外に長居してしまいそうな仕掛けが整っているのは心憎い限り。
駅の横の通りにはチェーンの居酒屋がひしめき合った状態だ。
そんな両国でちょっと異質な楽しみ方ができる「江戸noren」だった。

江戸noren
http://www.jrtk.jp/edonoren/shop/#tokyoshoten