千葉県神崎の酒蔵「鍋店(なべだな)」

 道の駅から酒蔵へ

寒くはないが風の冷たい頃(1月の終わり)に「道の駅発酵の里こうざき」を訪れたあとに時間を戻そう。午後に天気は回復したものの春を感じるほどの陽気ではなく、乾いた土埃が風に舞い、目を開けているのもつらいほどの利根川沿いだった。発酵の里と言うだけあって、そこから車で10分ほどのところに神崎の街の中心があり、そこには酒蔵が2軒ある。

  • 寺田本家 銘柄は「五人娘」「香取」
  • 鍋店   銘柄は「仁勇」「不動」

町に入ると寺田本家の方が先にあるのだが、その時は駐車場を見つけられず通り過ぎてしまった。町のメインストリート(決して大通りではない)を進めば直ぐに鍋店が右手に見えてくる。

広い駐車場には平日ということもあってか他の訪問者はいないようだ。そして駐車場の片隅に、五右衛門風呂のような巨大な釜鍋をおいているのは木戸泉、岩の井という千葉県の他の酒蔵と同じだ。
しかし、こちらは無造作に伏せているように見え、間違ってもディスプレイという感はない。
売店の軒先に下がっている酒林が風に煽られて何故かやや寂しげに見えた。
売店の扉もわずかに隙間から中を見せる程度で閉店状態だったが、事務所に声を掛けると私たちのために気軽に開放してくれた。

 不動の樽

売店の入口には「仁勇」の看板、そして店内の真ん中には「不動」の菰樽。
どっしりと腰を据えた風で、この酒蔵を見守っているようだ。
こうして2つの主要銘柄がはっきりと分かる。

鍋店株式会社
http://www.nabedana.co.jp/history/index.html
蔵のホームページによると、創業当時の銘柄は「蓬莱山」で、元々は成田山新勝寺の門前で創業し、この神崎に出蔵を設けたのは1899年だそうだ。
そしてさらに1909年に今の兵庫県灘区に出蔵を設けたときに始めたのが「仁勇」の銘柄だと記載がある。

「不動」の銘柄は2004年から日本酒の専門店向けに造り始めたそうだ。もちろん本店のある成田不動尊からの命名に違いないだろう。
店の奥の壁際にはひっそりと斗瓶が置かれていた。

鍋店(なべだな)の由来

当社の商号であるなべだなは古く江戸時代に遡り、金座や銀座、または釜座などのいわゆる『座』の一つである『鍋座』に由来します。 (中略)当社の祖先はその『鍋座』を幕府より預かり管理しておりました。(中略)当時老舗のことをお店(おたな)と呼んでいましたが、鍋座の『鍋』とおたなの『店』が結びついて『鍋店』(なべだな)と呼ぶようになったと言い伝えられています。

いつも酒蔵を訪ねた際に私は、地元でしか出回ることのない普通種や昔の1級、2級酒に興味が行き、そちらを購入して帰ることが多い。しかしこの日はそれらの一升瓶しかなく、持ち帰るには何しろかさ張るため断念することにした。せめて写真にだけでも収めておけばよかったのだが、こちらは全くの失念だった。

 第21回 仁勇蔵祭り

今年の「仁勇蔵祭り」は3月17日だとこの日には聞いていた。
毎年3月に蔵開きと一緒に町を上げてのお祭りを開催している。
ここの広い駐車場を会場にしてかなりのお客様が多方面化が訪れるらしく、下総神崎駅からのシャトルバスも運行すると言う。来ることができれば半日楽しめたのだろうと想像できる。

私たちは今年、残念ながら参加することができなかったが、21回を数えるとは大変なことだ。やはり町の人たちにも愛され親しまれていることの証明に違いない。酒蔵としても長く続けられるのにはこうした努力も欠かせない。
成田山新勝寺の門前から初めた老舗のお店が、神崎の町にも出蔵を設けて受け入れられ溶け込んでいる。

仁勇純米酒
冷蔵庫で冷たくするよりも「ひや」で、また燗でいただくと、その旨さが際立ってくる酒だ。こういう酒を生む風土がここにはあるのだろう。