日本橋 埼玉県行田・横田酒造 その1

 行田・横田酒造株式会社

かねてからお付き合いのある方に同行して、熊谷から秩父鉄道に乗り変えて東行田まで。新宿からは1時間20分ほどの行程で、3月の終わりに横田酒造株式会社さんにお邪魔してきました。

東行田駅からは3分も歩くことなく到着です。
主要銘柄は「日本橋」「浮橋」の二つ。そして、1805年の創業ですから、213年の歳月を酒造りにつぎ込んできた酒蔵で蔵の建物は100年以上になるそうです。

かつては東京の日本橋で酒造りに携わっていた創業者がおいしい水を求めて辿り着いたのが埼玉の行田。荒川と利根川に挟まれたこの地においしい水が湧くことから、この場所で酒造りを始め、修行の地日本橋に因んで「日本橋」の銘柄でお酒を販売するようになったとか。今では地名を商標にすることが困難らしく、非常に珍しいケースのようです。

この日は杜氏さんと専務さんのお二人にはゆっくりと時間をいただき、話もたくさん伺うことができたのは何よりも貴重な経験になりました。杜氏さんは南部杜氏の方で、まもなく地元に帰ってお米作りの準備をすると仰っていましたので、今頃は岩手の空の下でしょう。
山廃づくりや三増酒、近頃よく聞く完全発酵、日本酒の白麹造りなど、そして熟成古酒の話し。どれも楽しく参考になる話ばかりで、来年にもまた時間をとってもらう約束もできました。

 寒仕込み本醸造「陸王」


TBSのテレビドラマで人気を博した「陸王」という番組の設定が行田だったことから、行田の町も一躍脚光を浴びたそうです。そこで横田酒造さんでもそれにあやかって「陸王」の名前で本醸造を発売したところ、地元のお祭りの時などは瓶詰めが間に合わず、まだ温かい内から出荷せざるを得ないほど飛ぶように売れたということですから凄まじいことです。ただしTBSさんへのマージンは必要なため、これはこれで大変だったことでしょう。
確かに人気や話題になったものとタイアップすると商品も動くことは間違いないので、世間の動きには敏感に反応し、商品に結びつけることは大切です。
私は番組を見てなかったのわからないのですが、番組の中で地元の銀行が悪者になっていて、そのお陰で横田酒造さんの近くにある埼玉○○銀行さんは「かなりやりにくかった」とこぼしていたらしく、これは人気番組故のつらい宿命と言えるかも知れません。

 空港への出展で成果

何物にも目の付け所というのがあります。
結論として、しばらく苦しい時代が続いた横田酒造さんは一つのきっかけを生かして大きく業績を伸ばしたそうです。
当初は成田空港での出展の機会を得て、具体的な方策も持たないままに販売していたところ、外国のお客様の多さに、いろいろと工夫を重ねることになりました。

最初は外国人のお客様を接客するのが苦手で嫌で、逃げ出したくなるほどだったと聞きます。しかし、どの造りのお酒が受けるのか、ラベルは何が目を引くのか、どの時間帯にチャンスが多いのかなど、ひとつひとつ検証しながら、求められている商品と売り方に変えていった。やはり欲しいと思っている商品を並べることが常に売上を伸ばす鉄則です。まさにマーケットを把握することが一番です。

専務さんは毎日売り場に立ちながら、何を売りたいかではなく、何を求められているのかを探り続けることで、成功しました。やがて関西空港など、他の空港にも出展の機会をもらえるようになり、会社の売上も大きく伸ばすことに繋がったといいますから、一つの機会を軽く考えてはいけないということを教えられます。

つまらないと感じている今現在の仕事の、本質と可能性を常に探りながら毎日を過ごすことがいかに大切かを思い知らされます。私たちは、果たしてこの専務さんと同じ視点で毎日の仕事を見ているでしょうか?

何事にも目の付け所を疎かにして、日々に埋没してはいけないという教訓と思って、自分の周りを見渡したいと思います。