2021年の飲食店は何が変わるだろう

 国は当てにならない

2020年は年初からずっと新型コロナに追いかけられて終わってしまった。
飲食店は常に自粛を迫られ、何とか生き延びられたところも将来の不安しか残らなかった一年になったに違いない。
私が40年ほど飲食の仕事を続けてきたことから原則として飲食店を今も応援しているのだが、昨年は掛け声だけでは応援にはならず、むしろ飲食店の本質に目を向けることで今後の準備をするしかないと思い至っている。

しかし、何故か今の日本では、感染を広めているのは多人数で飲食をする人たちで、その場を提供している飲食店もその片棒を担いでいるように政府や自治体は専門家の一部を味方につけて発信している。
そんなに目の敵にするなら「すべての飲食店は1ヶ月間店内での飲食営業禁止」にして、そのための補償に予算を注ぎ込んでしまった方が遥かに早く解決するのではないかと、思いたくなる。

何れにせよ、今の政府は自分たちが主導して感染を抑え込もうという方針ではなく、「何もしない」ということのようだ。
であれば、飲食店は何かに頼ることなく自分たちで感染予防の経費を注ぎ込みながら、結果はともかく生き残る道を探すしかない。

 これまで通りはない

たとえ新型コロナの感染が収まったところで、今後の飲食店がこれまで通りに営業をしていくことが可能とは思えないのだ。
こんな不安定な飲食の業界で誰が仕事(主にアルバイト)をするだろう。
お客様の支払金額の安さを競うやり方は通用しないだろう。
リアル店舗を誰(どんなお客様)が実際に必要とするだろう。

世界でも「安い国」に成り下がっている日本。
それが今の現実だと理解しようとしない人たち。
こんな状況が進むと「日本に発注したほうが人件費も安いから」という国際常識になりかねない時代は遠くない。

特にこの30年、日本では付加価値を付けて少しでも高く物を売ろうという感覚は全く抜け落ち、他所よりも安い価格で同じ品質を提供しようという流れが続いている。そしてそれに歩調を合わせて、「物」ではない「サービス」までも安くしてしまった。

失われた20年はいつの間にか30年になっている。そしてこの30年の間、居酒屋の平均客単価はむしろ下がっているのではないか。
日本人の平均年収は下がり、若い世代はその影響が特に大きく、飲酒人口は減り、一人でいる時間が欲しい人が増えたこの時代。
飲食店もその傾向の範囲の環境では成長など望むべくもない。

10年前にはチェーン居酒屋の代表だった店舗はその多くを閉店するか、別業態に変えて何とか続けるかしている会社も珍しくない。
名前を出して恐縮ながら「和民」「白木屋」などはその典型的な例ではないかと思える。そしてその多くは更に客単価の低い店に業態変更している。

「一軒め酒場」「晩杯屋」などの台頭に引きずられるように変わっていった。
「鳥貴族」も苦戦しているという。「串カツ田中」は喫煙禁止から店作りを変えていった。飲酒を導入した牛丼チェーン大手の争いもそれぞれに結果が違っているようだ。「日高屋」はもうラーメン店ではなく中華居酒屋だし、様変わりは珍しくない。
ファミレスさえも飲酒客を取り込もうとして工夫を重ねているが、スタッフにその意識がない(マニュアルの問題かも知れない)からそのシステムとサービスは満足には程遠い。
飲食店の中でも居酒屋の使命はもう既に変わっている。

 構造改革では追いつかない

きっと、多くの飲食店が売れるものを次々と導入しながら、少しでも売上が上がるようにと変わってきたことももちろん頷ける。
しかし、これからの問題解決はマイナーチェンジではなく本質の見直し以外にないだろう。
繰り返すようになるが、飲食店は自分の存在意義を原点から考え直すしかないところに来ている。
「私の店は何のためにある店か!」

私の勝手な予想だけで言えば、小銭で酔える店は当たり前でなくなるだろう。
センベロという言い方で成り立つには相当に覚悟を決めたやり方が必要になりそうだ。
飲食店は自分たちがプロであるということをもっと大切にすべきだ。
言い換えれば、「そんなに安くは提供できない」というその自信がなければ早めに去ったほうが良いのではないか。
2021年以降はまさに、そこにこそ活路があると私は信じている。

新型コロナのお陰で自宅で過ごす時間が増えたり、外食が思うようにできなくなったりで「飲食」についてもその価値を多くの人たちが見直してきた1年間だったのではないか。だからこそ外食としての飲食の意味が問い直されてきたことだろう。
一般の人が自宅では作れない料理だったり、少し先回りをしたサービスの価値がどれほどの意味があるのかを、もう一度磨き直すことこそが飲食業の本質だ。
内装や調度家具ではなく、目に見えない価値で千円でも多くの支払いをためらわせない店造りが不可欠だ。

飲食業が追い込まれた迷路からいち早く抜け出す一年になって欲しいと願うばかりだ。