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イブは静夜 Silent Night
居酒屋にとってのクリスマスイブは、昔も今も「静夜」です。
まさに静かな夜。
理由は様々あれど、クリスマスは居酒屋にとって不要です。
私自身がこういう時期に他の店舗に行ったことがないので、どんなお店が賑わっているかは、全く実感がありません。しかし、一般的な居酒屋、特に和業態はクリスマスイブには大概お手上げでした。
或る1980年代のことなので相当に昔のことではありますが、24日の夜、目黒区の学芸大学の店で仕事をしていた時のことです。
20時頃だと言うのに、お客様は20代後半の女性二人の一組だけ。
「ねえ、一緒に飲まない?どうせ誰も来ないよ。」
彼女たちにそう声をかけられました。
確かにそれほどに深刻な暇さです。
内心はそれもいいかなと思いながらも、その有り難い提案をお受けすることなどできませんでしたが、彼女たちの言う通り、当分の間誰も来なかったのは記憶しています。
常識と慣習を退ける
居酒屋、特にチェーンの居酒屋は定休日などないもの。
そんな思いを持っているお客様はたくさんいることでしょう。
私は実は、相当前から12月24日は定休日にしてはどうかと思っていました。
うまくいかない時は平日の半分の売上にしかなりません。
しかも、これは毎年決まってのことです。
それに対して、数々の企画を何度もためしては来ましたが、効果があがることなどなく、下手に経費を掛けないに越したことはないというのが実感でした。
さらに、たとえ予定がないとしても、スタッフは休みたがります。
常識と慣習にとらわれることは、一種の拠り所です。
ところが、そんなものを取り払って俯瞰してみると、新しく見えてくることがあります。
果たして、クリスマスイブに開店していて、経営的にプラスになることがどれほどあるのでしょうか?そんなところから疑ってみると、新しい発見があることも、気づくかもしれません。
逆のことをひとつ。
12月24日の24時を過ぎて、カップルのお客様が来てくれることも珍しくありません。
大抵は同業者です。
世間一般の楽しみ方とは違って、仕事終わりに来てくれています。
そんな時は、そっとグラスワインをプレゼントしたことも…
こんな人たちを応援したくなる自分で在りたと思ったことは、度々でした。
居酒屋の役割は果てしないと思うこの頃です。