年の瀬の下北沢を改めて見る

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  住みたい街ランキング

かなり前に東京の住みたい街ランキングの上位に君臨していた下北沢。
その頃は自由が丘、吉祥寺などとともに人気は抜群でした。数々の地域が再開発されて、新駅もできたり紆余曲折の過程で、2017年は吉祥寺がトップを奪い返したという話を何度も聞きました。
そんな中、自由が丘はベスト10から外れ、下北沢は20~30位の間で、下北沢から歩いても15分ほどで行ける三軒茶屋の方が上位にいるようです。小田急線と京王井の頭線が交差する街で、渋谷からも新宿からも10分足らずです。しかも吉祥寺からも急行に乗れば10分程ですから、便利ということでは際立っているでしょう。
さらに、小田急線の地下化に伴い、街の真ん中を分断していた線路が廃止になって有名だった開かずの踏切もなくなり、南北の行き来は格段に楽になりました。

何をして住みたい街の上位に選択されるのかは別の方たちの判断に任せたいのですが、最近人気の街の名前を眺めていると、下北沢の異質を私は思ってしまいます。

開かずの踏切後

 下北沢のシンボル

今の30代以上の人で下北沢を知る人は、昔の終戦後間もないころの名残だったような「市場」の存在は忘れないでいるはずです。ところが、小田急線が地下に潜り、駅周辺の再開発らしい計画に基づいて、その「市場」はなくなりました。

良し悪しはともかくこの「市場」は、下北沢のシンボルだったのです。

下北沢市場後

この街の異質は他の街と比べて「新しい」という意味でのオシャレ感は乏しく、もうひとつは迷路のような細かい路地まで歩き回ったところで20分ほどで街を一巡りできる商圏の狭さです。もっとも「住みたい街」と「遊びに行きたい街」では違うでしょうから、この辺のニュアンスは微妙です。
駅周辺はまだまだ工事が続いていて、どんな姿に変わるのかはわかりません。かつての下町感と雑多なショップが並んでいた街に飲食店が目立つようになりました。ある意味昔ながらのシンボルを失った街が、次に何を特長とできるのかは今後の大きな課題かもしれません。

 下北沢の居酒屋の集客

下北沢は、ひとつには演劇の街です。小さな町の中に大小10以上の劇場があり、街全体の人を見ても間違いなく若い人が中心の街です。そして商圏に一般の企業は少なく、いわゆる会社員の人たちをターゲットにした商売はなかなか厳しいはずです。更に駅から2~3分歩けば周りは住宅街。戸建ての目立つ高級住宅街で大きなマンションもほとんどありません。

客層として考えるならば、失礼ながら小遣いの苦しい若い演劇関係者と、街を訪れる最近ではあまりアルコールを口にしなくなった若者たち、近隣の住宅街のお年寄りたちがお客様の中心なのです。
平日の昼間でも街を行く若者の数は相当なもので、うっかりすると「商売には最高だなあ!」と考える人がいるのもわかります。その証拠に不動産情報を見るとどこも立派な家賃ばかりです。このギャップがこの街の現実なのです。

 下北沢の飲食と街の課題

この街のどの居酒屋にも共通する風景を年の瀬の先日にも見ました。
一般的な17時を過ぎると徐々に数組のお客様が入りますが、18時を過ぎると止まってしまいます。次に入り始めるのは20時を過ぎてからです。

詳しい人は直ぐおわかりのように、遊びに来る若者たちは一部しかこの街で夕食を摂ろうとせず、会社員の数が圧倒的に少ないことと、街全体を占める物販店が閉店した後の20時以降でないと次のお客様がいないということです。

昼間の人通りや賑わいを見てでしょうが、どこにいっても飲食店の数は増えるばかりです。どこの駅前の商店街も物販店が減り、その後へ飲食店が入るという傾向が強く、商店街としての機能は壊れかけています。人が寄り集う意味を失っていくことが想像できます。
私が若かった頃から好きだった下北沢は風景としては過去になっています。再開発の名の元に、むしろ駅前が寂れた町はたくさん目にしてきました。下北沢の街が生み育ててきた魅力はきっと様変わりすることでしょう。それが新しい価値を生み人々に浸透していくことを願うばかりです。