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アメ横はどこへ行く?
春と言うにはまだいくらか早すぎる頃、上野まで出掛けた。
それほどの用事でもなかったため、すぐにたっぷりの空き時間ができた。
何とはなく向かった先はアメ横商店街。しばらくぶりに立ち入ってはみたものの、前回以上に変化が進んでいた。元々そうではあったがますます多国籍化が進み、日本の商店街を歩いているとは思えない。どこかのアジアの国の一角にいるようなものだ。
平日の14時頃というのに歩くのにも苦労するほどの人出で、概ね若い人たちが中心。ざっと見回しても当然、日本人の比率は間違いなく50%を切っている。むしろ店舗の従業員さんたちは遥かに日本人が多い。
この場所だけ切り取ってみれば、ここは日本ではない。そんな街がここにある。
ここを訪れる外国の人たちは何を求めてきているのだろうと思ってしまう。観光目的と決めてかかる訳にもいかない風で、なんとも不思議な街になっている。
変わることが常態の街
「今日の中継は上野のアメ横からで~す!」
と、毎年暮れの買い出し風景をテレビがこぞって放送で取り上げる。
そしてその時に伝えたいだろう意味と今は全く違う街。
何しろこの街の商店は何の拘りもなく年末だけ商品を入れ替えて、年の瀬バージョンにしてしまうほどの変わり身の速さがある。
だからだろう、外国のお客様が増えてくれば忽ちのうちにそれに合わせて、より多く物が売れるように商品や形態をすぐに取り替える。
変わることに躊躇がない。
変わることが大嫌いな日本人気質がここにはない。
変わらなければ生き残れないことを身にしみて知っているのだろう。
同じものを売り続けて○○年、を売りにする店舗などここにはないのではないかと思ってしまうほどだ。
御徒町 吉池
人並みを掻い潜って商店街を抜けると、そこは御徒町駅。
その横にはしばらく前に古かった建物を取り壊して建て替えが済み、見違えるようなビルがあった。
「そうか、吉池が変わったんだった。」
以前は格安の食料品を大規模に扱っていて、一般のお客様だけでなく業務店もかなり利用していた記憶がある。新潟としっかりとした絆があるのだろう、昔から他では手に入れにくい新潟地酒を意外なほど気軽に、しかも無造作に陳列していたことも忘れられない。
こうなれば新しくなったここ「吉池」に入ってみなければならない。
古い頃の店舗に地下売り場があったかどうかは思い出せないが、酒売り場は当時の2階のやや薄暗い片隅にあったような気がする。しかし、今回の新店舗の案内を見ると酒売り場は地下2階。それがわかれば他の階に浮気することなくエスカレーターを下ることになる。
吉池も変わった
それにしても、明るい。
全体が白く、明るい。
かつての吉池の面影などどこにもない。かつてアメ横と連なった雑然さにまみれて、それがそのまま魅力だったような店舗ではない。エスカレーターからの眺めだけでもわかってくる。
吉池も変わったのだ。
アメ横は古臭い通りのまま店舗の中身を変えることですっかりと違う街に変身することができる。吉池は箱を変えることで生まれ変わった。しかもここは外国人客を求めていない。
そう言えば神田にある有名立呑み店「味の笛」はこの吉池の系列だったなあ…
そう思いながら下り続けた。
地下2階まで降りると、そこには地酒の試飲販売をしているコーナーが目の前に飛び込んできた。
峰乃白梅。
越の三梅の一つと言われる「峰乃白梅」ではないか!
ずいぶん長い間お目にかかってなかったなと懐かしく思うと同時に、勿論そこで立ち止まることになった。