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吉備と言われる地域
国道180号線脇にある板野酒造場さんを後にして、先程来た道とは別のルートで備前一宮駅へ向かう。空腹なわけではないが周りにどんな店があるのだろうと見回しながら歩く。
しかし、それらしい店は見当たらず、 町の中心は 国道をずっと先まで行った そのカーブする辺りだろうと思ってはみたももの、確かめに行くまでもあるまい。
どの地方へ行っても感じることは、こうして歩いている自分以外に人影を殆ど見ないこと。
これが現実なんだなあと、改めて思い知る。
そうしているうちに手に提げた吟風生貯蔵酒と一緒に備前一宮駅へ着いた。
駅前には意外に広い駐輪場がある。
通勤なのか通学なのかはともかく、朝のピーク時間にはそれに見合った利用があるのだろう。
実はこの岡山市という町は坂が殆どない。
川の土手や山に登る時以外にはない。
東京のように何処へ行っても坂道だらけという土地柄から見れば、自転車にとって走るに何の苦労もいらない町なのだ。
岡山市街のやや北辺りから、この備前一宮を通り備中国分寺の方まで「吉備路自転車道」というサイクリングロードも整備されている。晴れた日に観光するにはこれが一番に違いない。
吉備の中山
「吉備の中山」と呼ばれる山の麓に神の子を祀る神社があり、町の真ん中を南北に下る「中川」がる。どちらも「中」という文字が町の主役を張っていたと思えるのは、まんざらかいかぶりでもあるまい。
吉備の国の真ん中だったであろうこの地域は、神の穏やかな息遣いに町を委ねているように感じる。神の宿る国として、それはあながち大袈裟なことでもないように思える。
代々に人が信じてきたことは特別な理屈を必要としなかったに違いない。
この町は親近感と同時に不思議な距離感がある。それは多分、私の拗ねた感覚のせいだけだとすれば安心するのだ。
列車の時刻まではまだしばらく時間があって、ホームに出てみる。
ホームから線路の向こうに見える山が「吉備の中山」で、その麓に桃太郎伝説の主人公と言われる吉備津彦命を祀る「吉備津彦神社」がある。
この、のんびりとした景色こそが案外飲食店に代わるご馳走なのかも知れない。
極聖(きわみひじり)純米一番滴
岡山駅に着くと、夜訪ねる知人の家で飲む酒が先ほど板野酒造場さんから買い求めて持ち帰った「吟風生貯蔵酒」だけでは足りないことに気づいた。どれだけあれば足りるのだ!と、弁解の理由を探しながら駅近くのスーパーの酒売り場で地元の酒を物色することになった。
極聖(きわみひじり)純米一番滴 宮下酒造株式会社
https://www.msb.co.jp/product/929/
宮下酒造株式会社のホームページより:
特に米の原料処理にはこだわっており、程よい米のエキスを引き出すために、米の吸水にはかなりの神経を使いました。さわやかな香りと酸味が特徴でのど越しが鮮やかです。甘口というよりかはさわやかな辛口
原材料名 :米・米麹
アルコール度数:15~16度
精米歩合 :朝日米60%
日本酒度 :+3
使用酵母 :協会1401号
確かに米の旨さを感じる穏やかな酒。ある意味、岡山の酒らしいという感じが伝わってくる。こちらは「独歩ビール」という地ビールもかなり以前から造っている酒蔵。
1914年の創業だそうだから既に105年。
立派な歴史がある。
板野酒造場
きびの吟風蔵搾り生貯蔵酒
アルコール度はやや低めの 14~15度
生貯らしい香りはそれほどには感じなかったが、飲みやすさが特徴か
暑い夏にはこれくらい軽めのほうが良い。
こうして酒蔵の話題と共に夜は更けていった。