瀬戸内国際芸術祭 直島編

この記事の目次

 フェリーの旅 濃厚な20分

20分など果たして旅といえるかどうか。
しかし、乗客の人たちや、周囲の景色、船の設備環境、スタッフの対応などを観るだけでも十分に楽しめます。

真ん中のかすかな姿が瀬戸大橋
瀬戸大橋02

宇野港を出て10分ほどで、右手の小島の間に、遠く瀬戸大橋が見えてきます。そこから見えることを知らないで乗船していると、気づくこともないかもしれません。日差しも強く気分的にはビール片手に、と行きたいところを、まだ午前中につき、グッと我慢しました。
二十歳前くらいの女性5人グループは陽気にはしゃいでいます。
高校生のような女の子2人は庇の陰で座り込み、しきりにスマホをいじっています。
やや年配の欧米人の女性の一人は、カメラのシャッターを押すのに夢中です。
ベンチに腰掛けた女性は静かに2人で瀬戸大橋の方を遠くに眺めています。
やがて船の左舷側の先に、直島の宮浦港が見えてきます。
フェリーはグルっと回り込むと、宮浦港には船首から接岸して停泊します。
そろそろ下船の時間です。
フェリーの中での下船前の放送が親切に知らせてくれたのは

地中美術館は60分から90分待ちとなっております」でした。

 島に人が来るということ

リンク: 地中美術館
「暑さを避けるなら、美術館で少し時間を潰せばいいか…」などと思っていた私は、ここに至って始めて、大きな間違いに気づいたのです。
直島は、周囲約16km、人口約3,000人の島です。
香川県香川郡直島町。

直島02

私が勝手に想像していた姿と、実際の直島の姿は、全く別物でした。よく考えれば宇野港~宮浦港だけでフェリーが一日13便、小型船4便が往復しているのです。どれだけの人の行き来があるかは分かりそうなものです。

船を降りると早速、「地中美術館行き臨時バスはこちらです!」と大きな声の案内が響きます。そして乗客はそっちへ流れていきます。しかも臨時は1台だけではなさそうで、島の緑によく似合った緑のバスです。

地中美術館がそれほどに有名で、しかもそれこそが目的のひとつであることを知らなかった。しかも立派な観光案内所も、土産物屋も、軽食ができるところも、休憩所もあるのです。「ENGLISH」の腕章をつけたスタッフもいます。

もちろん全てではないでしょうが、ここは観光で有名な島だったのです。
私が見る限りは「海水浴」が目的に見えるような人たちはいません。ましてや、昼に近い時間に釣り客がうろついているはずもありません。
宮浦港の周りには、漁船らしい姿の船もほとんど見当たりませんでした。なかなか美味しい物の話にできません。

時代とともに変わる。
昔の概念で決めつけると、認識を大きく誤ることを知りました。
新しい目的を創造することで、わざわざ人が来る。
概念を変えて、島ならではの良さを活かす。
島が生き残るために、生まれ変わる。
取り繕うことではなく、変革すること。
また新しく教えてもらいました。