居酒屋での食い逃げ

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 食い逃げの慣れた手口

かなり前の話、店長会議の日にある店長がボヤいていました。

カウンターの一人客がタバコを1箱を売って欲しいと言って、1本火をつけてから、「待合せをしている友だちを表まで見に行ってくるから良いかな?」と断って煙草の箱は置いたまま外に出て、そのまま帰ってこなかったと。

これなどは用意周到の確信犯です。しかし、初めから「食い逃げ」しようと企んで入店する人はたぶんいないのではないでしょうか?
長い私の飲食経験の中で、「食い逃げ」とは100%自分たち店側の責任だと確信しています。以前の記事にした「無銭飲食」は、確かに防げない場合がありますが、「食い逃げ」は自分たちの不注意によるものです。

 実際の例

偉そうにかく言う私にも2回食い逃げに遭った経験があります。2回ともそのシチュエーションは全く違います。バタバタと忙しくしていたピーク時と全くのアイドルタイムの時で、このそれぞれを恥を晒しながら紹介します。

 一度目はピーク時

奥の座敷で宴会があり、その座敷の横にトイレのある店でした。カウンターに1人でいたお客様がトイレに行ったのか、座敷の団体客が帰るのに紛れてそのままいなくなったのです。しかも10分以上後になってからですからどうしようもありません。

もしかするとレジで待っていたのに、団体客の1人と決めつけてこちらが気が付かにために、痺れをきらせて帰ってしまったのかも知れません。初めて見る人だったので、こちらもほとんど記憶にもありませんでした。未払いで帰るのは褒められませんが、明らかにこちらのミス。走って逃げたなら既に後の祭りです。

今となっては正確に覚えてないながら、料理やドリンクな残ってなかったと思います。きっとお会計のためにレジの前にいたのでしょう。彼にしてみれば、不可抗力のように団体さんに紛れて姿を消したと考えた方が良さそうです。
カウンターの中で見ていた調理場の従業員もトイレに行ったと思ったようでした。
もしもお会計と気づけば「カウンターのお客様、お立ちです!」と声を出していたでしょう。
「ありがとうございます!」と声を出しただけでは、団体さんに声がけしているとしか誰も思いません。
このように食い逃げしてやろと計算してレジに向かったのではないはずですが。気が付かなかったこちらに責任があります。

 二度目は深夜

二度目は閉店時間も近づいた深夜2:30頃のことでした。忙しくない日でお客様も二組しか残ってなく、自分たちも気が抜けていたのは間違いありません。従業員は3人いたのですが、洗い物や翌日の仕込みなどでお客様に注意していませんでした。エレベーターで直接出入りできる店のため、案外にお客様の出入りに気づきにくいことがあり、常日頃から入口にはむしろ注意していた方なのです。

しかし、客席や出入口から2分ほど目を離していた間に、テーブル席の一組2人のお客様がいなくなっていました。多分二度か三度は来てくれていた人たちでしたが、トイレを探してもいません。他の従業員に聞いてもみても誰一人心当たりがあるわけもなく、外へ出て辺りを探してみたところで無駄なことでした。
このように後で悔いた所で何の役にも立ちません。彼ら二人に最初から悪気があったとも思えず、交番まで行ったとしても細かな人相すら説明できないのです。

「食い逃げ」とはまさに言葉が悪すぎで、この言葉の中には自分たちの責任はどこにもなく反省さえ見えてきません。お客様のせいにしたいところから生まれた言葉だとしても、私には違和感があります。

私もその瞬間には恨み言しか出ませんでしたが、よくよく考えれば、普通に注意し、気を遣い、さらにお客様とオーダーのやり取り意外の会話をしていれば、こんな結果にはならなかったはずです。

この話には落ちがあります。
1時間ほど経って、先程の2人のお客様が店に戻ってきたのです。
「申し訳ありません、お金を払わないまま帰ってしまいました。」
「戻ってきてくれたんですか?」
こっちの方が驚いたくらいでした。
話を聞くと、お互いに相手が会計を済ませたと思ってそのまま帰ったそうです。自宅に帰ってから「いくらだった?」という会話になって気づき、わざわざ店まで再度来てくれたのです。
2人の善意に私は感謝するしかありませんでした。