独立しやすい?居抜き物件

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お得な居抜き物件?

最近探してみると、飲食店の居抜き物件が不動産屋さんに出ているケースが増えたような気がするのは、私の勘違いでしょうか?「居抜き物件」とは「造作譲渡」の条件がついた賃貸店舗のことです。ただ、このところの居抜きは造作譲渡100万円とかも付かず、そのまま無償で使えるところが多いようにも思います。

端的に言えば、ラーメン屋さんでの営業をやめた店舗があって、厨房設備からイス・テーブルまでそのまま店舗に残している物件で、造作0円であれば、1円も払わずにその設備を使えるということです。場合によっては、調理器具から食器に至るまで全て置いていく条件もあります。極端に言えば、契約して届けさえ出せば、工事なしですぐにでも営業開始できる店舗です。良い方に考えれば、つい最近まで営業していたのですから、設備に問題はないはずです。

少ない資金で店舗を持ちたい人には選択肢のひとつになる物件ということですね。内装、水廻り工事をして、厨房設備を新たに揃えていると、それだけでかなりの投資になりますから、手軽にスタートするには確かに便利です。

最も多く目につくのは駅近くのビルの4階以上にある物件で、前はスナックだった物件です。それに続くのが、ラーメン屋、イタリアレストラン、焼きとり屋、居酒屋ところでしょうか。美容室だったり、洋服屋だったりもありますが、洋服屋さんだと居抜きでは出られず、原状復帰が求められるケースが多いでしょう。

なぜ居抜きが多い?

飲食店も、廃業した後に立ち退く場合は契約により原状復帰しなくてはなりません。しかし、この解体費用がかなり必要になります。どうせ処分するしかないなら、造作を付けてせめて100万円でも買って引き継いでくれる人がいればラッキー!ということになります。もっともこれには大家さんの了承が必要ですから、認めてもらえないことも普通にあります。

造作譲渡で100万円貰おうにも、それさえ無理なら、0円となるわけです。時に、次の借りては原状復帰してくれれば借りるという場合もあります。その時には退去した人が解体業者なりに依頼して、数十万~200万ほどの費用を負担して原状復帰した上で立ち退くことになります。

低予算で始められるということに注目して、この居抜き物件での開業を精力的に進めているところもあるようです。面白いもので、上階のスナック跡は別にして、大都市圏では飲食店のあとにはそれほど間を空けず、次の人が入居して商売を始めているということが多く、物件としてずっと空いたままということも少ないのが事実です。

飲食店はどうしても人気が高く、自分の独立店として開業する人はあとを絶ちません。そんな人たちの味方が「居抜き物件」だと考えれば納得がいくというものかも知れません。しかし、私にはそうは思えないのです。

居抜き物件の意味するもの

そもそも、なぜ廃業したのでしょうか?
この視点を外して見るわけにはいかないのです。

大まかに言えば2つです。

  1. その人本人の営業努力が足りず廃業に至った。
  2. 立地に問題があり家賃とのバランスで無理があった。

多くの方がよく見る光景でしょうが、様変わりの激しい店舗は短期間ですぐに次の店舗に変わっています。たとえ商店街の真ん中にあったとしても、それが必ずしも良い立地にならないのが現実です。自分の始めたい店舗の業態がその街のその場所に合っているのか?自分の力でその規模の店舗を運営できるのか?マーケティングと経営計画さえ、ろくに考えす始めてしまう人だっているくらいですから。

どういう業態の店舗を以前にその場所で営業していて、その店のレベルはどれくらいで、お客様は何人来ていたのかは大いなる興味でないと、次に始める人は能天気と呼ばれても仕方ないことでしょう。

居抜き物件であるということは、何故そうなったかを真剣に検討する必要がる物件だということです。自分を信じることは大切ですが、根拠のない自信はただの過信です。ここを見誤ることなく、居抜き物件には対応して欲しいと思います。

居抜き物件のもうひとつの問題点

イス・テーブルは自分の目で確認すれば、きれいに掃除するだけで使えるのか、少し補修が必要なのかは簡単に知ることができます。しかし、厨房の冷蔵庫冷凍庫は見ただけでは判断できません。メーカーのメンテナンスを受けることは安心にも繋がるはずですが、この費用はそんなに安くないのです。それを怠ると、もしかしたら、開店後1週間で動かなくなるものだって出てくる可能性もあります。

もしも私が居抜き物件で居酒屋を始めるのならば、という条件で考えてみます。

「営業期間長くて2年を目安にする」

これを絶対に念頭に置くでしょう。それまでは運が良かったとしても、これを過ぎると什器備品の買い替えが必要になってきます。これ以上の投資をしても未来がある店舗にできるなら、買い替えたり改装したり、近くに移転したりという新たな選択肢が生まれます。もしもその時点で目が出なそうなら、見切りをつけます。

もちろん、それより先にその立地で自分に確信がなければ始めませんけどね。居抜き物件の持つリスクを自分でしっかりとまとめて、出店前のマーケティングは大事にして欲しいと思います。何故に居抜きで売りに出てるのかは、想像以上に大切な問題です。

手軽さに惑わされることのないように、その街を朝も、昼も、夜も何度も何度も歩いて、自分の目で確かめてください。その先に見えてくる自分のいる景色を重ねてください。きっと何かが見えてきます。