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変えるべきは見る目
日本は労働力不足でこの先が思いやられるから外国人労働者を合理的に受け入れようとして、国会で無理強い的に法案が可決した。頭の良い学者さんたちも同じく、日本は人手がないだの何だの喧しく謳っている。しかし、求人倍率がどうだこうだと言いながら、日本の労働力が足りていないとは私には思えない。
ただし、このまま何の対策のもしないで進んでいけば、人手不足で廃業するところは次々に生まれることだろう。
政府はどこに人が余っていて、どこに不足しているかを本当に把握しているのだろうか?そして不足しているところには何故応募がないのだろうか?
分かっていても政府は公表しないような気がするのは私だけだろうか?
単純に外国人労働者をそこに導入しようという内容を聞けば、日本人の誰もが従事したくない産業ばかりだ。
資格が必要だったり体力勝負だったり、人の手に頼ることでしか前へ進まない職種ばかり。介護、飲食、建設現場、農業など…
では何故従事したくないのかと言えば、仕事量の割には給与が低すぎると思っているからに他ならない。
だからこそ外国からの労働者をそこに当て込んでお茶お濁したところで、何の解決にもならないし、外国人労働者を初めから愚弄していることになるのは素人でもわかる。まるでもっともらしい理由をつけた人買いのようなものだ。楽して金になるほうになびく日本人と日本の制度を見ようとしてないことが全て。問題の本質は何も明らかにされていないし、明らかにするとマズイのだと考えるしかない。
こういう問題は各産業の企業努力だけで解決できるわけがない。
修正では変わらない
誤解を恐れないで言うと、もしも私がこの国の独裁者ならば、「介護士」と「保育士」の資格を補助する新資格を新設してでも高校生、大学生の授業にも一部必須としてその資格取得を奨励する。そして彼らの就職先はその分野で保証優遇する。国防のために他国で兵役があるように、国を守るためのことと考えれば理由も尊厳も誇りも成り立つ。
もちろん、新卒の若者を就業させるのだから環境も収入もしっかりと整えるのは当然だ。例えば2年間の経験をした者は次の就職に有利になるくらいでちょうど良い。その2年間で上級資格を取得しそのまま就業を続けるならば給与は3年目から1.5倍に考えるのも良い。働く施設に補助するからややこしくなる。働く本人に直接補助することで分かりやすくなる。
教えたからと言って簡単に務まる仕事ではなく、向き不向きも大きく左右すると私も理解している。だからこそやり甲斐や信念を持ってこの仕事を続けられる人は働く場所や施設にかかわらず収入も保証すべきだと確信している。
今後AIに取って代わられる可能性のある職種は、人に頼るのを早くからやめた方が良い。景気が良くなった指針として殊更に有効求人倍率を取り上げようとするが、平均値だけで内側の見えない事実が包括された名目の数字など何の役にも立たない。ネジ曲がった構造をそのままにして、景気は良くなったと喧伝しても誰が信じるだろう。
近々にAI関連のものがが急速に進化普及すると、そこに人は要らなくなり大量の失業が急速にやってくる。
特に一般事務職は要らなくなるとさえ言われている。
今後絶対に必要度が増して人の手が欲しい業種が、人材どころか人員不足に陥っている今、早くからそこに人を回す施策が急務なはずなのだが。
需給のバランスは既に内部崩壊しているのに、それを大きな声で言う人はいない。予想するに一般事務の仕事はパートさん中心に任せればすむようになる。ほとんどの一般事務がフルタイムでなくても務まるように、システムは急速に変わっていくに違いない。
ハローワークで私が経験したことを言うと、少ない一般事務の応募には何人もが群がり、片や大手のファミレスであろうと掲載から2ヶ月経過してもパートの応募さえ一人もない現状がある。
飲食店の勤務拘束時間は?
飲食店は大きく2つの方向に分かれるように思う。いや、既に別れているのだが、もっと明確に差が出るだろう。
徹底して人を使わないところと、徹底して人を使うところの2つ。どちらに付くか中途半端なままでは飲食店も生き残れない。その上でお客様に自分の店を選んでもらうには何が必要かを見つけ出したところが先行するだろう。入店からお会計を済ませて店を出るまで、スタッフの誰にも会わない飲食店ができても私は驚かない。
中でも勤務時間の扱い方が今後の大きな分岐点になるだろう。 残業の扱いについて世間は過敏なくらいに反応してしまうし、飲食店もその規制を受けることは例外ではないのだ。そこで少し想像してみて欲しい。 ランチタイムから営業していて、途中で閉店して休憩時間を設ける店だとする。
例)
昼営業 11:30~14:30
夜営業 17:00~23:00
・開店準備に出勤 10:30~ ランチの後片付けは ~15:00
・夜の準備開始は 16:00~ 清掃片付け退店は ~23:30
延べ営業時間だけで1日9時間、店にいる時間は13時間になる。
正社員が10:30に出勤した場合は、午後のまとまった1時間の休憩時間の他に細切れでも4時間(合計5時間)の休憩を与えながらでないと23:30まで勤務させて一日8時間勤務に抑えることはできない。これができたとしても実態は理不尽に違いない。
善し悪しは別として、板前は自分の料理を美味しく食べてもらいたいことを8時間勤務で解決しようとは考えていない。
飲食店で働く人の現状
飲食店は前述のような環境での勤務が現実として珍しくないし、そのままに受け止めて経営を成り立たせるのは相当の困難を伴う。 飲食業界の人なら、ファミレスやファストフード店の多くは各店舗正社員は2人、もしくは1人だろうと知っている。1人が複数店舗の店長を兼任していることも珍しくないと聞く。
超大手のシステム化されたファミレスやファストフード店が、多くの正社員を各店舗に抱えて営業できないのはここにあるし、それでもお客様が来てくれるように安価で提供しているのも頷ける。
10年ほど前、ある一般の会社が社員にアンケートをとった話があった。 1日8時間で週5日勤務と1日10時間で週4日間勤務とどちらが良いか聞いたそうだ。半数以上の社員が週4日勤務の方が良いと答えた。
ところがこれは労基法ではよろしくないらしい。私は業態によって細かい修正は認めるべきだと考えるのだが、頑なに公平に譲ることはできないのが法律。「ただし…」などの定めのない限り例外は絶対に認められない。
飲食店が労基法をしっかりと守り、他業種よりも多くの給与を保証し、高品質の料理と際立つ接客サービスを提供するには、千円札数枚の客単価ではとうてい追いつきもしなのである。桁がひとつ変わってきそうだ。
飲食店の仕事は知識や技能が特別に必要なくてもできる仕事だろうか?
結局の所、飲食業で働く日本人がいないから外国人を安く雇用して、商品とサービスの質には目を瞑ってもらうかわりに安く提供する。そうと割り切った店が増えたのが事実だろう。だから外国人労働者を増やさなければならないと言うのは早計すぎる。
飲食店で仕事する人は?
今回(2018年12月)に国会で通過したような内容で飲食店が外国人労働者を積極的に雇用することはないだろう。特に正社員と同じ条件となれば全くもって手を出しにくい。現在はマレーシア、ネパールの就学生(日本語学校)・留学生(専門学校、大学など)が増加ている。もちろん日本人と同じ時間給で雇用するのが基本だ。本業が学生の彼らは、アルバイトができるように資格外活動の許可を得ても週に25時間以下の勤務に押さえなければならない。本人がもっと仕事したいと希望しても、それを超えればお互いが処罰されることになる。
中国系と韓国の人たち以外は当然ながら漢字は苦手だ。飲食店のメニューや取扱機器の表示を覚えるだけでも時間がかかる。その時間を費やす余裕が今後の飲食店にあるだろうか?
飲食店のランチタイムは、昼間にお子さんを預けて仕事をする人には最適な時間帯に他ならないため、この戦力を見逃すのは大変もったいない。今でもそういう人はたくさん仕事をしているに違いない。
週4日、1日4時間、1日4,000円とすると1ヶ月で7万円ほどの収入になる。ところが仮に、2人のお子さんを保育園に預けるのに1ヶ月3万円以上かかるとすると、応募する人はどう考えるだろう。
今の日本は、本当に労働力不足なのだろうか?
仕事をしたいのに働けない人は少数なのだろうか?
仕事をしたいのに働けない人は何処にいるのだろうか?
じっくり考えてみれば、この答えは既に誰もが分かっているはずだ。某総理大臣が公言したように、一億総活躍するのではなかったのかと。