この記事の目次
保健所への届け出
飲食店営業者ア ー日の使用量を的確に把握し、翌日まで持ち越さないよう努めること。イ 客への提供は、期限表示内のものに限ること。ウ 適正に表示されたものを取り扱うとともに、使用したかきの表示に係る関係書類(伝票等)を48時間以上保存しておくこと。エ 保存基準を厳守すること。
厄介なノロウィルス
リーフレット「防ごう!ノロウィルス食中毒」事業者向け(PDFファイル)
ノロウィルスは人間の小腸で増殖し排泄され、浄化されないままに海まで流れたものをカキ(二枚貝)が吸い込んで中腸腺に溜め込みます。カキの体内では増殖できません。そしてそれを生食したり、加工した際に手や器具についたものが充分に洗浄されないまま、他の食材を二次汚染し、それを生食することで感染し、数百個のウィルスの摂取でも発症するそうです。
忘れていけないのは、発症した人の嘔吐物からも感染することです。「ウッ」と思っても、トイレに行くのが間に合わないほどに、いきなり嘔吐することも多いそうです。この嘔吐物を処理するには厳重なマニュアルが存在するくらいですから、気軽に近づいてはいけないほど危険なのです。
更に言えば、ノロウィルスを体内に持っている人間の3割ほどは発症しないそうですから、自分がノロウィルスを排泄しているとは考えもしません。当然その人の手洗いが充分(衛生レベルで)でなければ、その人の手から次々に汚染します。5秒ほど水洗いしたくらいでは全く洗った内に入りません。
しかも、床や壁や便器についたノロウィルスが乾燥すると、空気中に舞うこともあると言いますから始末が悪い。場合によってインフルエンザウィルスと同様に空気感染もするというのです。何年も前に池袋のホテルで起こった集団感染は廊下への嘔吐物処理の不完全から空気感染したと聞きました。
ロウィルスは芯温85~90℃で90秒以上加熱しないと不活化しないそうです。ノロウィルスは生物ではないので「死ぬ」という概念がなく、他に害を及ばさなくなる状態が「不活化」です。従って、それだけ加熱しないと、万が一そのカキがノロウィルスを持っていた時には、それを食べた人が感染する可能性があるということです。
ここでついでにもう一つ。
「芯温85~90℃で90秒以上加熱」したカキ。フライや焼き物、鍋物。美味しい訳がありませんね。見は縮んで半分以下になり、とろけるような食感と甘みも失い、下手をするとゴワゴワ感だけが残る料理になってしまします。美味しく食べてもらうには、いよいよリスクを避けられないということです。
ああ、厄介だ!
生ガキを売る?
以前、生ガキの届け出に保健所へ行った時のことです。担当の方が書類を見るなりこう言いました。
「生ガキを売るんですか?届け出で、許可ではありませんから受理はしますけど、止めておいた方がいいですよ。」
この言葉は今でも覚えています。というよりも忘れられません。これには私も同感だからです。カキの生食を禁止すれば、ノロウィルスの食中毒や感染のリスクは大きく減ると考えられます。しかし漁業や養殖で生計を立てている人たちにとってはとんでもないことです。
ずいぶん前、担当店舗に臨店した際、おすすめで「殻付き生ガキ」を置いていました。そこで調理場のアルバイトに聞きました。
「店に入荷してから提供して処分するまで、どう扱っているか説明して。」
すると、かなり曖昧なことしか答えられず、厳重なマニュアルのもとに扱っているとは思えませんでした。店長と調理長を呼んで、即刻販売を中止させました。私の頭のなかで「生ガキ」は、小さなミスで大きな被害を生む危険物と同じように位置づけています。生産業者の方には失礼ですが、それほどの意識を持たないで「生ガキ」を売ることは、私には許せません。
その後、私が見ていた店舗ではしばらくの間、生ガキだけでなく、加熱用のカキに至るまで扱いを止めたことがありました。誰かが感染者として持ち込まない限り、店内からノロウィルスが出ることを排除したかったのです。
冒頭で書いたように、私はカキが大好きです。そんな私が、飲食の現場を離れるまでの10年以上、カキは一切口にしませんでした。何しろ間違っても自分が持ち込む訳には行きませんから。
そしてそんな私は、もしどこかの店舗で生ガキやカキ鍋を食べて感染したとしても、その店を恨むことはないでしょう。二次汚染まで気にするならば、カキを食べないにしても、カキを扱っている店には行かないでしょう。ノロウィルスに100%の安全などないことを知っていますから。私に関しては、「自己責任」です。