生ビール無料の価値

 オリンピックの時の集客

ことあるごとに売上を延ばしたい、そのために客数を増やしたいと、居酒屋はオリンピックをも頼みにしようとします。
「オリンピック生中継中」などの大きな看板を店頭に掲げていたりするのも珍しくないでしょう。
そしてちょうどこの時期、冬季の平昌オリンピックがピークを迎える頃になっているために、居酒屋の悩みは深いものになっているはずです。お客様にそそくさと自宅に帰られたのでは商売になりませんから、何らかの手を加えてお客様に寄ってもらおうと、結局は「応援生ビール1杯無料!」などと、お手軽な販促で誤魔化すことになりかねないのです。

所詮は付け焼き刃に過ぎず、その程度では何の売上増にも繋がらなかったという結果を招くことになったり、むしろ偶々来た人が安く飲んで帰ったという場合の方が多かったりと、案外「何もしなければよかった」という選択肢が正解だなどと、皮肉なケースもあります。

 生ビール無料の価値

生ビール1杯無料という価値はどれだけあるでしょうか?
かく言う私も若い頃は平気で「1杯無料!」と謳いながらやって来たものです。お客様で安いことや無料であることを嫌がる人はほとんどいません。しかし、その内私が感じるようになったのは、多くのお客様に特別感や感動は「全く無いなあ」ということでした。

やがて2000年になってからは積極的に安売りすることを徐々に少なくしました。そして2010年を過ぎてからは、サービス券も含めて一切配らなくなりました。

どこに行っても「1杯無料」、18時までは半額など、お客様にとってはそんなもの当たり前。特に有り難いわけでもない、「タダだと言うからもらうか…」と言った程度です。私自身がそんなものを目当てに店を選んだ試しがないのですから、もっと早くに気付くべきだったのです。
そうは言いながら、私はいろいろなことを試しました。ひとつ心掛けたのは「簡単にタダではあげない」ということでした。

 簡単にタダではあげない

サッカーワールドカップの優勝国を当てよう。
オリンピックの日本の金銀銅の獲得メダル数を当てよう。
四文字熟語クイズ。
プロ野球日本シリーズ優勝は○勝△敗でどっちのリーグ?

などなど、それぞれの細かい内容については皆さんの想像にお任せするとして、正解者に賞品を用意するという企画については、「なになに?」とお客様が楽しそうに乗ってきました。応募の仕方などに工夫をすると、顧客名簿づくりにも大いに力を発揮してくれました。

ある時ある店で、「ことわざクイズで…」というようなことをやっていた日、時々来てくれていた有名なタレントさんが「俺に任せてみろ!」と真剣に取り組んでくれていたそうです。
「誰だこれ考えたのは?難しすぎだよ…」と大笑いしてくれたとか。

お客様も簡単に手に入るようなものではなく、自分の努力や知識で勝ち取ることには意欲を燃やしてくれます。

 本当に喜んでくれているか

私たちは居酒屋の可能性を余りに限定的に捉えているように見えます。お客様が求めているものとはまるで違うものを、お客様は求めていると私たちが勝手に信じて販促をしていることはないでしょうか?
一所懸命に工夫して用意したオリジナルのおすすめ料理にしても、お客様が求めているものとかけ離れていては売れるわけもありません。

真っ当な値段ももらうことでお客様と正面から向き合って初めて、居酒屋は存在価値を確認することができるはずです。私たちはその現実から尻込みして小手先でお茶を濁すようなやりかたで生き残ろうとしたところで、すでにお客様には見透かされていることに気づいていません。
居酒屋のこれからを真剣に考えるならば、やはりその原点に立つことだと私は改めて提案したいのです。お客様はそれを待っていると私は信じています。