孤独のグルメに学ぶ

テレビ東京で人気のシリーズとなった番組。
2012年の初回放送から、すでにSeason6になっている。
「孤独のグルメ」
松重豊さんが下戸で大食漢の主人公を演じている。
仕事で訪れた街でお腹をすかし、看板やファサード(入口の外観)からその日の店を決めて料理を楽しむのがお決まりの筋書き。最初のシリーズの頃、名の売れた役者さんは松重さんくらいなものだったが、今や人気番組となり、予算も付いたのだろう、最近のシリーズでは他にも一人二人と名の知れた方がゲストで出演している。

失礼ながら、この番組に登場するのは有名な高級店ではない。
誰でもが気軽に立ち寄れる店ばかり。いわゆる典型的なグルメの方たちの口に合うものは、端から相手にしていない。
しかし、主人公の井之頭五郎(松重さん)は常に一人。そして、店のルールや常連さんの注文する料理を見ながら、自分なりの楽しみ方を発見して、ウーロン茶とともに至福の時間を過ごすのである。

私たちは普段の食事の時間を楽しむ努力をどれだけしているだろうか。
有名店の料理や希少な食材だけでなく、日常に与えられる空間を自分の工夫や少しのこだわりで、美味しい時間にしているだろうか。
私のような酒好きからしてみれば、酒が絡まないこの番組にはいささか残念な思いはあるものの、酒がないからこそこの番組の良さがあるように思う。だからなのだろう、番組を観ながら、「ここはビールだろう!」と突っ込みながらも、納得してしまう力強さがある。

特別な場を求めることなく、いつもの街角の路地を入ったところにある幸せ。
擦り切れかかった暖簾の中に見える歴史。
こっちの姿を見ると、横に寄ってカウンターの席を空けてくれる常連客。
「いつものでいい?」と水を運んでくるお母さん。
「大将ッ!また来るよ」と言って楊枝をくわえならが勘定する親父。
番組の最後に、原作者の久住さんが同じ店でビールを飲みながら過ごすシーンが、酒好きへのせめてものお裾分けかと感じる。
※ 写真はSeason1に出てきた西永福の釣り堀やさんの近くにある遺跡。
「松の木遺跡」
松の木遺跡 (1)
テレビ東京 孤独のグルメ