地酒三品 年納めに相応しい

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 大田区の秘密?

神奈川と埼玉を結ぶ京浜東北線のJR大森駅を囲む町は、私の中では一種独特の町です。東側のそれほど広くないビジネス街と西側の山王の丘へ続く高級住宅街とに挟まれ、南へはそれぞれ蒲田と池上へダラダラと町並みが続いていきます。

この大森と蒲田がしのぎを削りながら「大田区」の主役を争ってきたというのは、たぶん本当の話でしょう。大森の「大」と蒲田の「田」を足して名前にした「大田区」ですから余計に意識するのもわかります。山の手のイメージを大事にしたい大森。対して町工場などが多かった城南の下町というようなイメージが強い蒲田。

その大森まで出かけることになりました。別にも寄ってみたい店もあったのですが、そんなに何店も回ることもできず、そちらは断念しました。大森は概ねお客様の数よりも飲食店のほうが多いくらいの激戦区。これは案外人の知らないところです。
さて、駅から直ぐの場所で牛めしの松屋さんの下にあり、ホームから窓ガラスの見える店で今日の地酒をいただくことにします。

 秋田の梯子から

 刈穂純米新酒生あらばしり

秋田でも名の通った刈穂。そのあらばしりです。麹の香りと米の旨味が残り、フレッシュさタップリの薄濁り。まさに季節を感じるお酒で、今こその楽しみです。
秋田清酒株式会社ホームページより引用:
今年度収穫したての新米『秋田酒こまち』を使用して今年一番に仕込み、刈穂伝統の酒槽しぼりにて丁寧にしぼり、香味が最もフレッシュな『あらばしり』部分を瓶詰めいたしました。溌溂とした新酒の中の新酒たる味わい
  • 原料米: 酒こまち
  • 精米歩合:65%
  • アルコール度数:16.0-16.9%
  • 日本酒度:+2
  • 酸 度: 1.8
11月の終わりから12月にかけて発売される各酒蔵のしぼりたては本当にたまりません。中でも「あらばしり」とは酒槽に醪を絞り袋に入れて乗せただけで溢れ出てくるお酒のことですから、最も雑味のないピュアな味をいただけます。店で見かけたら、ついコレ!と言ってしまいます。

ここで注文した料理が「蒸しほやポン酢」です。滋味の深いホヤはこの酒の力強さにも負けていません。

 秋田・純米酒「和賀山塊」

私が何度も紹介したお酒です。ここではあまり多くを語らないことにします。麹米歩合が30%以上だという話だけでも、「えっ!」となることをわかっていただければ、これも見かけたら飲みたくなるのです。おそらく東京でも殆ど出回ってはいないでしょう。蔵のホームページにも「限定酒」とあって、私自身まず見かけたことがありません。

以下、私の記事ですが、良かったら見てやってください。
香りが華やかだったり、辛さが際立ったり、端麗のすっきりだったりというお酒でないことだけはお知らせしておきます。しかし、私が感心して飲むお酒のトップクラスにいることは確かです。きっと蔵では利益のないお酒のはずです。

 宮城・伯楽星特別純米生詰酒

以前に私が仕事をしていたところで伯楽星をメニューに取り入れた時のコメントが以下です。

この酒は殊更に主張しない。日本酒の肝は「酸」にあると言う杜氏さんが多いが、その言葉の意味がわかるような酒。生詰ゆえの麹の香りが調和して、ふくよかさに包まれる酒である。

近頃の試飲会で蔵人さんたちに話をうかがうと、「酸」のことを意識されている方が多いように感じます。同様に、酸度が高めのお酒が出品されていることも多く、全体としての流れが「淡麗」一辺倒でなくなっていることは確かなようです。

麹とお米の香りがほんとうに上手く混ざりあって、やや高めの酸との相性で飲み飽きることのない造りです。ボトルの裏書きには、「燗にする時は温度を高めにし、パッと消える味わいをお楽しみください」とあります。ここが面白いところで、温めの燗を勧めない理由が必ずあるのです。

次の機会には試してみましょう。

この時、「のど黒の煮付け」もいただきました。のど黒の旨さをたっぷりと一緒に味わうには、こういう酸に自信のあるお酒の方が合うと思います。なんとも贅沢をしてしまいました。

今年お世話になったお酒にも、店の調理長にもみんなに感謝です。