飲食店、居酒屋の未来は?

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 新型コロナで飲食店の置かれる立場

2020年2月から次々と膨らんできた新型コロナの影響で世の中は規制や自粛で随分と縮んでしまった。その中でも最も顕著に世間でも心配された業界に飲食業があった。

2年前から今後10年で飲食業は大きく様変わりすると私は考えていた。
しかし、その10年を待たずに変わる時が来たということは間違いないだろう。
その大きな理由は、これまでの飲食業を取り巻く数々の矛盾が行き着くところまで来ていたと私が考えていたからにすぎない。しかし、ここに来て新型コロナという感染症のもっとも危険な感染機会が外食にあると、専門家の人たちが声を大に言い始めた。

画像は2019年10月浅草の夜

今現在の飲食業は生産性が低く所得も世の中の底辺に置かれている。当然のように人手不足。しかし店舗だけは商店街にもあふれてきて、商店街はその体をなさなくなり飲食店街に変わってきている。しかもアルバイト等のスタッフは相当数を外国人に頼らざるを得ない。それは日本人の多くから就きたくない仕事だと認識されて、その下層部分を外国の人たちが担ってくれているからだ。
既に日本の飲食店の多くは外国人労働者(就学生・留学生)なくしては成り立たない所まで来ている。

 飲食店の抱える矛盾

それでいて店舗の家賃は下がる気配も見せないできた。
今後将来も高齢者ばかりが増え、人口も就労人口も減り、飲酒習慣も持たない人が多い世代がすでに40代になってきている。職場環境や待遇、収入、どれを取り上げても飲食店にとって他の業界より優れていると自慢できるものはないだろう。結局は過当競争の中、大手のチェーン居酒屋も人件費を減らすことで乗り越えようとする傾向から抜けられない。
そんな矛盾がすでに明らかになっていたはずだ。
そこへ新型コロナがやってきた。

飲食店、特に酒類提供飲食店は営業時間もカット、座席数もカット、場合によって営業することさえもカットされる。しかし、お客様への検温もアクリル板もどんなに投資して努力しても不顕性感染者のお客様がいれば、店舗が自力で感染を100%予防することなどほぼ不可能だろう。だからこそ「怖い」と考えるお客様が来店を控えることは如何ともし難い。

果たしてそんな業界で、将来に夢を持って仕事をしたいと考える人が今後も増えるとは思えない。

 大型居酒屋チェーンが乱立した頃

私が飲食業に携わり始めた頃、それは同時に居酒屋チェーンが乱立し「居酒屋ブーム」と言われた時代が一気に走り始めた頃でもあったが、それこそが飲食業が本来の道から外れることになった一因だと私は今考えている。

職人である調理人は現場にいらない、プロの接客など必要ない、調理であれ接客であれマニュアルがあれば十分で、慣れれば誰でもできる。
脱サラしてFC加盟すれば?という調子で店舗を増やし続けた。

ファストフードではあるまいし、100品になろうかというアイエムの料理を揃えて酔っ払い客を相手に接客するのが中心の居酒屋が、単に支払金額が「安い」という価値に頼り続けて生き抜いて行けるだろうか。

大型チェン店であれ個人店であれ、先ず居酒屋は店舗数を大きく減らすだろう。中でも価格が安いことだけが看板だった店舗が先に姿を消すだろう。
現在ではコンビニの惣菜の質はそのへんの居酒屋の味を遥かに上回っている。
実際のところ多くの居酒屋はそれほど必要とされていなかったのだ。

 飲食店とは何なのか

オーダーさえ人間が聞くことのなくなった(タブレットでお客様が自分で注文する)店舗が、他に設備がなく仕方ないから席までスタッフが配膳するという程度の接客なら、レーンを流れて来る料理と何ら変わらないばかりか、むしろ気の利かないぶんスタッフがいるだけ鬱陶しく思えることさえある。

今ならば新型コロナのせいにして閉店するほうが目立たないかも知れない。
しかし、そういった店は遅かれ早かれ憂き目を見ることになったに違いないと私は考える。
新型コロナの感染拡大以前から特に大都市の飲食店は飽和状態を通り越していた。降って湧いたコロナの災難がその淘汰の流れを加速することは確かだ。

お客様にとって必要な飲食店とはどういった形態で、どんなサービスが必要とされているのか?ここから洗い直していち早く方針転換した店舗は生き残ることだろう。

調理人がぜひ食べて欲しいと仕入れた季節柄の旬の料理を揃え、スタッフはそれを丁寧にお客様に勧め、お客様の身体も気遣いながらひとつひとつ説明し、その料理に合った地酒を最も美味しい飲み方で提案する。

飲食店を素人中心に運営しようとすることから脱却し、たとえアルバイトであってもスタッフがプロとしての自覚を持ち、それに見合った報酬を受け取れる店でなければもう、お先真っ暗な時代に入ってきたと考えようではないか?
私は切に願っているし確信している。