時代おくれ 究極の甘口酒に…チャンスはあるか

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 毅然と向かい風に立つ

甘口の日本酒を求める人が、本当にいなくなってしまいました。

そういう私も例外ではなく、甘口酒を探して飲むには至っていません。
「時代おくれ」というお酒に出会ったのは、もう10年以上前になるでしょう。
20世紀の終わりだったか、21世紀の初めだったか。
まず、甘口というだけで世間では見向きもしてくれない時代です。
「酒一筋」というブランドの中のひとつ。いい名前ですよね。

岡山県の利守酒造さんのお酒です。
  酒一筋 時代おくれ 山廃純米吟醸
  日本酒度 -10
  酸度 1.7
時代おくれ画像

利守酒造 : 時代おくれ

この上の画像は利守酒造さんのホームページからお借りしました。
時代おくれの名の如く、今と違って甘口全盛の時代があったのです。甘い、ということがご馳走だった時代。50年以上前はそんな時代でした。
今ではとにかく「辛口!」としか、言葉に出ないお客様たちを前にして、こんな甘口酒を造る、度胸と信念と夢はどこから出てきたのでしょうか。しかもこのお酒は甘いけれど、よくある「甘ったるさ」はないのです。
甘さのつらい所は、いつまでも口の中で、その甘さが胡座をかいて我が物顔に居座っていることですが、この酒にはそれがない。切れの良い甘口、という、少し聞き慣れない言い方が正しいかもしれません。

 甘口酒の未来

東京の酒屋さんで棚に並んでいる姿は、ほとんど見ることがないでしょう。
私は、試飲会などに行って「酒一筋」の幟を見ると、どうしてもそのブースにお邪魔して、この「時代おくれ」を探してしまいます。
以前に紹介した私の記事の「吟醸新酒祭り」にも出品されていて、しばらくぶりに飲ませてもらい、思わず嬉しさに笑みがこぼれました。

「時代おくれ」というネーミングは果たして蔵元の本意だったとは、私には思えません。
こういった甘口の究極に位置する酒こそが、未来を見つめ、未来の新しい可能性を発信する酒だと、蔵元は考えたのだろうと、私は想像します。
次の時代に向けて、送り出した「時代おくれ」。
未来を託す「時代おくれ」という作品に、私は夢を感じています。

辛口!と無意識に注文する前に、一呼吸置いてみて欲しい。
甘口の旨酒を味わう楽しみを自ら手放すことが、自分の未来の可能性を手放すことにならないように、我が身をも戒めたいと思います。