GINfest.TOKYO 2018 その1

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 天王洲アイルの立ち位置

梅雨の晴れ間に運良く、東京の天王洲アイルの一角で、ジンのフェスティバルが開催されました。場所はかなりオシャレな所で、普段であれば行くことのない場所なのですが、昔の仕事での馴染みも少しあり、足を運んでみることにしたのです。

天王洲アイルは、今でこそあまり聞かなくなった「ウォーターフロント」のイメージで店作りをしているところも多く、自家製クラフトビールを看板にした有名店もあります。

そんなビルの間を抜けて運河のほとりにある会場に到着したときには、すでに大変な数の人たちで辺りは賑わっていました。

場所柄、素材柄もあるのでしょうが、これまで私が参加したお酒のイベントで最も平均年齢の低い参加者たちだったことは間違いありません。一緒に参加した友人も含めて、たぶん私たちが一番の年長者だったのではないでしょうか。20代~30代の方が中心で、しかも女性の参加者ひときわ目立っていました。

最近は若い人たちがお酒をあまり飲まなくなったと言い始めてかれこれ20年ほどが過ぎると思います。しかし、今日のこの光景を見ると、彼らのお酒に対する価値観が違ってきたのかなと明らかに感じます。

酔うためやコミュニケーションのためではなく、その場を演出する景色の一つになれるお酒。

天王洲という場所に立ってみて、酒の歴史の流れまで考えてしまう自分が古めかしく滑稽で、これから待つジンの世界がいよいよ楽しみになりました。
運河の岸辺から小さな桟橋の向こうに会場があります。舟を模したように運河に浮かぶ施設で、それだけでも雰囲気を盛り上げていて、桟橋には列をなして参加希望者が並んでいます。
入場料なは不要ながら、試飲するは5杯分500円の試飲券を購入して会場入りすることになりです。

これがなければ見て回ることや出品者に話を聞くことはできても、味を見ることはできません。ここがなかなか上手いシステムです。しかもこの500円は安い!公式には1杯10mlとなっているのですが、実際にはサービスが過ぎたのが事実でした。

Tennoz Harboe market 会場デッキから撮影

 ジンとは何か?を知るところから

何から何処から手を付けて良いのか、さっぱりわからいながら、当初は話を聞くことから始めました。受付と本会場は1階。地下は世界からのコアな出品。1階は日本の各地のジンメーカーが出品していて、これほどに国産のジンがあるのかと驚いたのが本音です。ニッカウィスキーだったり、焼酎メーカーだったり、多種多様に工夫をして自慢のジンを出品しています。

それぞれ詳しいことは後述します。
その前にここで押さえておきたいジンについての定義や特徴を先に。

ジンとはある意味、非常にゆるい定義のもとに造られているお酒だとはこれまで知りませんでした。ベースとなる穀類は大麦、じゃがいも、ライ麦、とうもろこし、糖蜜など、これも細かく限定されることなく、穀類由来であれば、それに「ジュニパーベリーを加えたスピリッツ」と考えれば良いのかも知れません。
ジュニパーベリーとは「西洋ねず」と呼ばれる針葉樹の低木の一種で、園芸にも人気があるとか。
そして、「ベリー」とは言うものの、そのまま実をかじってみると味はベリー類とは違い、あの独特の風味と苦味がしっかりと感じられるそうです。
リカーページより引用:
http://liquorpage.com/what-is-juniper-berry/
ジンは原料に複数のボタニカル(ハーブや果皮)を使用するのですが、ジュニパーベリーはその中で欠かすことができない原料です。(中略)
ジンの定義
・ ジュニパーベリーの香りを主とする
・ 最終アルコール度数が37.5度以上
こう見てくると、「うちでは焼酎を造っていますから」と鹿児島の蔵元の方が教えてくれたように、焼酎メーカーが自家の蒸留設備を使ってジンを造ることはさして経費を上乗せすることにはならないのです。ベースの穀類に決まりがない以上、焼酎メーカーが芋や米や麦の原料からジンを造りチャレンジするのは十分な素養でありで、これを以ってして世界に名乗りを上げることも可能なのです。
この定義の意外な緩さを知らず、私などは日本国産のジンがこれほと多様にあることなど全く存外のことでした。そしてジュニパーベリーの他は自然由来のものであらば何をボタニカル(醸造過程に混入するもの)に使っても良いという寛大なお酒だけに、個性の置きどころもそれぞれに数限りなく持つことができます。まさに世界へ発信するにはうってつけのお酒と言うべきのように感じます。